第8話 絶対に嫌なこと

 私は、お姉様に私がどれ程婚約に向いていないかを説明しました。

 この説得には、お姉様も納得してくれたでしょう。


「……で、でも、シャルリナにも結婚に憧れとかあるんじゃないかな? いい人が見つかったら、別にいいんじゃない?」

「いい人?」

「シャルリナの怠惰な部分も受け入れる人……世話好きな人が見つかれば、婚約してもいいと思うようになるんじゃない」

「はあ、お姉様はわかっていませんね」

「え?」

「まあ、仕方ありませんか。よく考えてみれば、お姉様にそういうことは言ってませんでしたからね」


 お姉様は、今度は感情面について聞いてきました。

 きっと、私にも結婚願望くらいはあるのではないかと思ったのでしょう。

 ですが、私にはそういう願望はありません。そもそも、私は貴族としてとかそういうことは関係なく、結婚したくないのです。


「いいですか、お姉様。赤の他人と一生をともにするなんて、私は嫌です。そんな風に縛り付けられた人生なんて、面白くないじゃないですか」

「そ、そうかな?」

「ええ、私は自由に自分の人生を謳歌したいと思っています。私にとって結婚は、鳥から翼を奪うようなものだと思ってください」


 結婚なんて、私は絶対に嫌です。

 私が求めているのは、自由な生活です。結婚というのは、自由を奪う忌むべき行為でしかありません。


「でも、自由にさせてくれる人がいるかもしれないよ?」

「まあ、そもそも、赤の他人をどうしてそこまで好きになれるのか、私にはまったく理解できません。そんなに人って、信用できますか? 例えどんなことをされても、私は裏があると考えてしまいます」

「えっと……それを言い出したら、家族でも同じじゃないかな? シャルリナは、私やエルード様に裏があると思う?」

「家族は別ですよ。生活を共にする以上、色々と見えてきます」

「それなら、生活を一緒にしてみればわかるんじゃない?」

「なんでわざわざそんな面倒なことをしなければならないんですか?」

「あ、うん……大体、わかった。シャルリナは、やっぱり結婚には向いていないんだね」


 色々と言った結果、お姉様は私が結婚に向いていないことに納得してくれました。

 まあ、私自身、私のことはよくわかっているので、この結果は当然でしょう。

 人には、向き不向きというものがあります。私の場合は、結婚に不向きだったというだけでしょう。

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