第18話 聡明な人

 私とエルード様は、スレイナ様と対面していた。

 本当に怖い。何を言われるか、ずっと緊張し続けている。早く、彼女のことが判断できることを言ってくれないだろうか。


「……とりあえず、座ってください」

「はい、失礼します……」


 スレイナ様に言われて、私とエルード様は椅子に座った。

 とりあえず、立っているよりは気が楽なので、これは助かる。少しだけかもしれないが、心を落ち着けることができるだろう。


「さて、それでは話を始めましょうか。まず、先程からあなたは私を怖がっているようですね……」

「え? あ、その……」

「それは、当然でしょう。あなたからすれば、私は怖いはずです」

「す、すみません……」


 スレイナ様は、私が怖がっていることを見抜いていた。

 それは、当然のことなのかもしれない。とても緊張していたので、態度に出ていてもおかしくなかったはずである。


「結論から言いましょう。私は、あなたに敵意などは持っていません」

「あ、えっと……」

「もちろん、色々な思いはあります。ですが、あなたには何も罪はありません。だから、そこまで怖がらないでください」

「あ、はい……」


 スレイナ様は、私に対して敵意を向けたりはしていないようだ。

 感覚ではあるが、その言葉は信じていいような気がする。彼女の態度から、そんな気がするのだ。


 なんとなく、彼女がとても固い理由がわかった。恐らく、彼女は私に対してどう接するべきか悩んでいるのだ。

 色々と思う所がある。それは当然のことだ。浮気相手の子供に対して、穏やかな気持ちでいられる訳がない。


 だが、聡明な彼女は、私に恨みをぶつけるようなことはできないのだろう。

 その複雑な思いが、私に対する態度が固くなっているのではないだろうか。


 私も、同じような思いを抱いているので、そのはずである。

 彼女とどう接するべきなのか。彼女がどんな人物なのか。それに、とても悩んでいた。

 だから、彼女も同じ思いだった。願望も入っているかもしれないが、そう思うのだ。


「といっても、あなたには難しいでしょう。その気持ちは、わかります。ですから、それはこれからの態度で示していきます」

「わ、わかりました……」


 スレイナ様は、私の目を真っ直ぐに見ながら言葉を放ってきた。

 その鋭い視線から、私は目を離さない。もう怖がらないという意思を固めて、しっかりと視線を合わせる。

 その目を見ていると、自然と恐怖はなくなっていった。今まで見えてこなかった彼女の心が、その視線を通して伝わってくるからだろうか。

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