第53話 疾風の騎兵団
『ウリャアアアアッ!』
今にも倒れそうなほどよろめきながらも、ついにクリムゾンセラフは立ち上がった。
『うおっと、お前
至近距離から突然話しかけられて、勇輝は目を丸くした。
いつの間に来ていたのか、目の前に見覚えのある《ケンタウロス》騎士団が集まっている。
『えっ、リカルドさん?』
『命令されてたったいま着いたところだ。
その
そういうリカルドの《ケンタウロス》も全身に傷を負っていた。
隊長みずから剣を振るい、負傷しなければいけないほどの激戦をくぐり抜けてきたのだろう。
『あっ、そういえばランベルトたちは?』
『そこでまだ寝てるぞ』
リカルドは
『あの通り機兵はオシャカだが、中身は無事だ。
まあしばらく使い物にならんがな』
そう言いながら、リカルドは勇輝のクリムゾンセラフを片手で
『おわっ』
『まあガキ共にしちゃ良くやった、後は大人にまかせておきな』
『ちょ、ちょっと待った、どこに連れて行くつもり?』
『決まってんだろ、お前らを本部に持って帰るんだよ』
当たり前のことを聞くな、と言って彼は歩き出した。
『ちょっと待った!』
『あ?』
『どうせなら、俺を魔王の所まで連れて行ってください!』
『…………』
わずかな沈黙の後、リカルドは恐ろしく低い声で勇輝に警告した。
『かまわねえが、お前そろそろ死ぬぞ』
冷たい口調ではなかった。
むしろ言葉に
『そうやって意地をはって
守護機兵ってのは便利な
『……それでもいい』
勇輝の言葉にも、いつもの野蛮な荒々しさはなかった。
『みんなが命がけで戦ってる。
敵も味方も、全員がだ。
俺も自分の役割を果たさなきゃいけない。
今ここでその役割から逃げたら、俺は一生下をむいて生きていかなきゃいけなくなる。
生きている人にも、死んだ人にも、顔向けできなくなっちまう、だから』
フーッ……。
歴戦の勇士はあきらめた様に深いため息をついた。
おそらく今までも同じようなやり取りをくり返してきたのだろう。
『わかったよ、送ってやるから少しだけでも休んでおけ』
『あ、ありが……んがっ!?』
《ケンタウロス》がいきなり反転したせいで、勇輝は舌をかんだ。
『静かにしてろ、
『そういうことは先にいえ……痛てえ!』
今度は頭をぶつけてうめき声を上げる。
『こちとら馬車じゃねえんだ文句いうな、乗り心地は保証できねえよ!』
と、そこで機兵の背中に声がかかった。
「待ってください、私もお
「わ、私も!」
その声が首なし死体となっていた
見れば《
二人とも意識を取り戻したばかりなのかひどく顔色が悪かったが、意地と執念だけで立っていた。
「ここまで来て戦線離脱とはあんまりでしょう、私たちも最後まで連れて行ってください!」
「ランベルトが行くのならこの私もついて行きます、この人はほうっておくとどんな無茶をするか分かりませんから!」
似た者兄妹のわがままに、リカルドは再度ため息をついた。
『ったく、どうしてこう死にたがりが多いんだ……。
しょうがねえ勝手にしろよ!
お前ら、このクソッタレな聖女様ご一行を魔王の
『フッ、仕方ないですな』
『今日はマジモンの
魔王の付近はもはや
彼らにとっても命がけの行動になるというのに、まったくあきれるほど見事なタフガイどもだった。
『作戦開始だ、いくぞテメエらー!』
『オオオオーッ!』
ランベルトたちを内部に乗せてから、《ケンタウロス》の集団が一丸となって走り出した。
大地の
火炎地獄を駆け抜け。
悪魔の包囲を
強い。そして速い。
馬のパワーに人の器用さをあわせ持つ守護機兵《ケンタウロス》。
集団による騎馬突撃はまさに戦場の主役だった。
『ははっ、こりゃ楽でいいやあ……』
《ケンタウロス》の走り方になれた勇輝は、遠慮なく脱力してリカルドにまかせっきりだ。
『
勇輝たちを
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます