026

「二人は気が合うんだね。面白っ。はははっ」


よほど面白かったのか、ツボに入っただけなのか、日下さんは控えめながらもクスクスと笑い続けた。


そんな日下さんを見るのが新鮮で、私はポカンとしてしまう。ママはふっとため息をつきながら、私に言った。


「芽生ちゃん、暁ちゃんのことよろしく頼んだわよ」


「へ?」


意味がわからなくてすっとんきょうな返事をすると、ママにバシンと肩を叩かれた。


「よろしくやれって意味よ!」


「ママ、日下さん狙いなんじゃないの?」


「あーホントにこの子はっ!譲ってやるって言ってんのよ!」


呆れ返るママと未だに笑っている日下さん。

それを見て首を傾げる私。

ふいに日下さんと目が合った。


「よくわかんないけど、よかったです。日下さんが笑ってくれて。いつもそうやって楽しそうに笑ってください」


「不思議だね、芽生は。俺のことどんな目で見てるの?」


「どんなって……」


「俺のこと何も知らないくせに」


「えっ。そ、それはそうですけど。……そうですよね、ごめんなさい」


そうだ、ただ私の感覚だけで日下さんのことを見て話している。会社で笑う日下さんはいつも寂しそうに笑う。本人は一言もそんな事を言っていないのに、勝手に寂しそうな笑顔だなんて思うのは失礼なことだ。


私が日下さんを好きだから。だからきっと余計に気にしてしまうだけなんだろう。


こんなことを言われて、日下さんも気分悪いよね。

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