第181話 鏡派? 不思議派?
千秋がパーティーに着ていったすみれ色のドレスは、蛍手製の物である。
1月から自分のジムに通う様になったのをいいことに、全身のサイズを計ってなおかつ蛍好みのスタイルになるメニューを組んでいたのだ。
そして自分の好きな小説のキャラの衣装をアレンジしたドレスを、その頃から作りはじめパーティー前に貸したというかたちで着せることに成功している。
ドレス姿はパーティー会場でも評判は上々だったが、そんな裏があるとは千秋は知らない。
コスプレでふと思い出して、千秋は蛍に訊ねる。
「ねぇ、青木川アリスって知ってる? AAともいうらしいんだけど」
途端、蛍の目の色が変わった。
「なに、千秋、AAを知ってるの」
「そんなに詳しくは知らないけど、最近よく聞くんでね。やっぱり知ってるんだ」
「知ってるなんてものじゃないよ、彼女の作品全部持ってるもの」
蛍は立ち上がると、西側エリアに行き衣装が掛かっているハンガーの横にあるカラーボックスからファイルを持ってくる。
「ほらこれ、ウェブ小説をプリントアウトして綴じたやつ。彼女の作品は一定期間ネットで発表されると削除されるの。だからこうして保存しているのよ」
「コピペしてPCに保存してないの」
「もちろんしてあるわよ、鑑賞用と保存用と布教用に分けるの当然じゃない。これは布教用」
ルーズリーフに印刷され厚紙タイプのファイルにきちんとまるで1冊の本のように作られている。
千秋はバラパラと目を通すと、すぐに真っ赤になった。芝原をら聞いていたからエッチな内容だと知っていたが、こんなにも濃いものだとは思わず不意打ちされてしまった。
「ね、すごいでしょ。あたしも何度使ったことか」
生々しいこと言うな、と思いながらも目を離さない千秋であったが、何枚目かに挿し絵が飛び込んできた。
「これ絵じゃないわね、写真画像なの」
「それがAAの人気のひとつなの。おそらくなんだけど、本人の
「このコが作者なの」
千秋はまじまじと見る。
「正確には作者かもしれないだけどね。AAこと青木川アリスは年齢性別国籍不明、職業官能小説家、ただしウェブ限定。複数の投稿サイトに
「そりゃまた念のいったことで」
詰襟学生服で顔半分を隠しながら悩ましい
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