第115話 生け贄も人身御供もやらせるか
「常務、お話があります!!」
扉を開け、いきなり入ってきて話しだす千秋に護邸と秘書は驚いた。
「さ、佐野主任、いきなりなんです、ノックもせずに失礼じゃないですか」
身だしなみを整えながら慌てる秘書が咎める。
「すいません、急を要する事でしたので」
あれ? この秘書さん、護邸常務の机の上に腰かけてなかった? まあいいや、それより常務だ。
「さきほどサトウ課長から大変な事を聞き出してしまい、報告にまいりました」
「な、なんだね」
椅子に座り、どことなく焦っているような声で護邸は返事をする。
「課長の横領したおカネですが、ギャンブルに使ってたわけではなく、とある人物達に脅されて渡していたそうです」
護邸の目がひかる、いつもの切れ者のような目つきに戻った。
「どういう事だ、詳しく話してくれ」
さて、うまく話さないとすべて無駄になる、頑張れよ私。
千秋は深呼吸して、護邸に話し始めた。
「サトウ課長は、スズキさんとの不倫現場をよからぬ輩に見つかり、証拠画像を撮られ脅されていたそうです」
「ふむ」
「それが、いわゆる反社会的な者とかヤンキーではなく、一般社会人でなおかつ私達の関係者でした」
「関係者? 社内の者かね」
「今、世間を騒がせている群春物産の社員、キジマタダシ。つまり今回のコンペの相手で、しかも担当者だったのです」
護邸の眉間にシワが寄るが、千秋は続けて話す。
「今回のコンペはたまたまだったそうですが、これ幸いとキジマ達は課長にスパイをやらせたそうです。前回コンペに負けたのも、こちらの情報が筒抜けだったからでした」
「それが本当なら見過ごせない話だな。本当のなのかね」
「間違いありません」
「で、」
「はい?」
「君のことだ、何らかの対応策を持っているんだろう。それを聞かせてもらおうか」
護邸は机の上に両肘を着き、組んだ手の上に顎を乗せ、千秋をじろりと見た。
「コンペには当初の予定どおり一色に行かせました。そちらは任せてもよいでしょう。問題はキジマ達と警察です。警察はキジマ達を確実に逮捕するため、余罪をかき集めるでしょう。となると会社に警察が来るかも知れません。今のうちに対策をこうじるべきです」
「だからその対策を訊いている」
「それは……」
千秋は言葉に詰まった、今のところノープランだからだ。直ぐに対策をせねばと勢いで来てしまったが、対策内容までは考えてなかった。
「……どうしましょう?」
護邸が、かくっと座ったままコケた。
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