第69話 その3

「正当防衛に、民間人の逮捕協力ね」


千秋の背後から、同じ格好をした人が声をかける。


「そっちも片付いたの」


かいしゃのみんなに助けてもらったわ。たぶん後で大騒ぎになると思う」


下に転がっている男を指指しながら言葉を続ける。


「これ持っていったらさらにね」


気絶しているのを確認して、2人は話を続ける。


「ケイから聞いたときは驚いたわ、まさか5年前の大事件の関係者に関わっているなんて」


「半信半疑だったでしょうけど、無駄骨にならなくて善かったわ」


「襲われない方が、警察こっちとしては善かったんだけどね」


相変わらすハジメは真面目で堅いな、まあだからこそ長く付き合っているのだけど。


「じゃあ、あとはお願いね」


「はいはい、お迎え呼ぶから早く帰りなね」


千秋はヒールを履き直すと、駅の方に戻っていく。ある程度離れたのを見てから、ハジメは署に連絡して、主犯を捕まえたと連絡を入れた。


10分後には赤色灯を遠慮なく回したパトカーが2台やって来て、気絶した男と黒のワンボックスを引き取っていった。




千秋は、駅の手前で迎えに来ていた蛍のクルマに乗ると、蛍とハイタッチした。


「よっしゃ、成功」


「現行犯だからね、これで48時間勾留されるから、コンペには出られないわ。これで勝ちは確実ね」


 時計は午後11時半を表示していた。

 つまりキジマ達は月曜の午後11時半まで警察にいるので、コンペに出られない。蛍の計画どおりだった。


 なおかつ、今から取り調べをすぐするにしても、警察発表は早くても明日になる。それから報道になるなら、ネットニュースで日曜の午後から、そして本報道は月曜の朝になるだろうから、財団側にも知られる。


「記事になるかな」


「一流会社の社員が集団レイプ目的の暴行よ、それだけで記事になるわ。ましてや襲った相手は警察官で、元有名人。絶対なるわよ」


「ノブにも感謝しないとね」


 今回のことは千秋個人の事であるが、過去の事件を蒸し返す事になるので、2人には懸念があった。

過去の被害者をセカンドレイプする事にはならないかと。


 もちろん、他人は他人と割りきる事もできたが、2人にはそれが出来なかった。

 なので警察には申し訳ないが、キジマ達の画像データ動画データを消去することにした。


「キジマ達に気づかれたくなかったから、直前まで出来なかったけど、いいタイミングて出来たわ」


キジマがすぐにデータを流そうとした時はヒヤヒヤしたけど、無いと知った時の驚き顔を見れたから、まあいいかと思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る