第48話 その2

 皆、自分のスマホでめいめいにマップアプリで場所を確認している。


「ああ、たしかにやりやすそうな感じっすね」


「ここから人気の無いところとなると……、ダメだ、これじゃわからねえな」


「会社の端末で」


「バカヤロウ、会社の端末じゃログが残るだろうが」


「現地に行ってみますか」


「……そうだな、明日の動きは分かっているんだ、ヤるのは明日の夜にするか。今夜は明日の為に下調べにするぞ」


「うっす」


「拉致ったら、いつもの順番でヤる。動画と画像を録るの忘れんなよ。それをネタにコンペをやめさせる、その後はいろいろと役に立ってもらうか、いろいろとな」


キジマが下卑た嗤いでニヤつくと、他の者もつられてニヤついた。


「おっとそうだ、あの女をそこまで誘い込まなきゃダメじゃないか」


「リンチョウにやらせたらどうです」


「リンチョウか……、アイツにやれるかぁ?」


「脅しゃ、必死でやりますよ」


「ふん、そうだな。なにがなんでもそこに連れてくるように言っておくか。じゃあお前、壱ノ宮に行って調べてこい。拉致ったあとやりやすい場所を見つけてこいよ」


「はい」


キジマは何人かに命令したあと、考える。


まったく、なんでこんなことになっちまったんだろ。大学のときの事なんて5年も前の事だろうが、それを今さら掘り返しやがって。おかげで5人まとめて名古屋に来るはめになっちまった。親父に戻りたいって泣きついたら、コンペをお膳立てしたから、それで手柄をたててこい。それを理由に戻してやるなんて言いやがる。めんどくせえ。


 一緒にとばされた他の4人をキジマは見回す、どいつもこいつもキジマの顔色しか見ていない奴らだった。


オレの言うことをきくコイツらにやらせて、働かないつもりだったのに、どいつもこいつも言われたことしかやれねえ。つかえねえ奴らだ。プレゼンの資料つくりなんてはじめてやったよ、このオレがだぞ。それに向こうの情報が手に入るラッキーまであったんだ、コンペは絶対勝つはずだったんだ、なのにジャマしやがって、あのオンナ!! そうだ、あのオンナが悪いんだ、なにもかもあのオンナが悪いんだ、あのオンナのせいに決まっている、セキニンをとってもらうのはトーゼンだろ。土曜の夜が楽しみだな。コイツらは仕事は何にも役に立たないクズだが、こういう事なら役に立つからな。あのオンナめ、楽しみにしていろよ。


泣き叫ぶオンナを想像して、またニヤつくキジマであった。

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