排泄小説

 鰻が出たのかと思った。尻の穴から鰻が抜け出たのかと思った。それくらいでかかった。太くて長かった。

 ちょうどいい具合に軟らかかったのでそんな感触もしたのだった。肛門のところを通過するときにちょっとした快感があった。出たがっていたものが余すところなく一挙に出たんだから、そんな風に感じるのも無理のないことだった。出した途端に空腹を感じるほどの快便。穴が切れることもなし。

 この目で確かめないわけにはいかず、おれは軽く尻を浮かせて、便器の中を覗き込んだ。ここまでと思うほど上の方まで来ていた。便の端のところが。水に浸かっているのは全体の半分くらいのものだった。あとはまるで昼寝の最中の首長竜みたいに、せりあがった丘の部分にもたれかかって湯気を立ちのぼらせていた。

 これほどのものには年に一度お目にかかれるかどうかというところだった。今にも鎌首をもたげて挨拶してきそうだった。お前のケツもなかなかの居心地だったがそろそろ行くぜ、あばよ、とか言って。

 これだけの大物になれば、簡単に流せないのも当然のことだった。水洗を二回試してみたがびくともしなかった。カーブにのっちりと張りついて一ミリも動かないのだ。でかいだけでなく、粘り気もばっちりだ。

 二つに切るしかなさそうだった。もしくは三つに。それでも駄目なら四つに。五つに。ぶ厚いステーキみたいに六つに。バラバラ殺人みたいに七つに切り分けなければ。

 手に紙を何重にも巻きつけて事を成すというのは、あまりやりたくない方法だった。どうしようもないときにはそうしたことも過去に何度かあったが、いずれも外出時のことだった。だが、今いるのは自分の部屋だ。他に道具の選びようがある。

 恵野茶子が二、三日前にホームセンターで買ってきた棒切れのことがふと頭をよぎった。植物がまっすぐ育つように添え木として使うのだと言っていた。あの女はベランダ菜園か何かはじめるつもりだったのだ。


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