第68話 体育祭。−4
チアガールの衣装に魅了されて、もはや手遅れだった。脚を上げる時の姿勢が恥ずかしくて先輩を見つめるのができなかった。元々こういうものだったと言われても見てる俺が恥ずかしい…
俺のことを意識していたのか、時々先輩がこっちを向いている気がした。先輩と目を合わせたら不意に思い浮かぶ先までのキス、最後の一瞬だけ口を離してお互いを見つめた。
先輩の瞳…綺麗だったな…
「先輩!!!!!!チアガール!最高!!!!盛り上がるぞー!」
「うるせぇー!康二!大人しくしろ!」
どんだけ幸せなんだよ…
「春木、ここにいたのか!」
「おう、夕。」
「先輩たち綺麗だよなー」
「二宮はどうした?今そんな話するのかよ!」
夕は違うと思ったけど、二人ともチアダンスに目を取られていた。
「はいー!次はチーム『北』の応援団演技が始まりまーす!」
『北』は確かに武藤と木上がいるチームだったなー康二のやつも最近木上と仲がいいみたいだし…
「おい、康二。木上が出てる。」
「…?木上のことを言い出しても…」
「え?ごめん、好きじゃなかった?」
「え?いやいや…なんの話?」
その間、武藤と木上が入っていたチーム『北』が運動場に現れた。『南』と違って『北』の人たちは黒い服を着て、すごい気合が入っているように見えた。
「あれ?」
今更知ったけど…佐々木先輩も『南』だった。
「康二、あっち佐々木先輩だ。」
「佐々木先輩…」
「そう。」
「なんでそんなの言うのかい…」
「なんかモテる康二って…意外…」
「何がだよ…」
「てか、前に佐々木先輩から聞いたけど…お前2度も告られたくせになんで答えをちゃんと出せなかったな?」
「…知ってたのか。」
パワフルな応援に運動場が盛り上がった。センターを取ったのは武藤恵、その派手な動きは『南』とは他の魅力を発散していた。チーム『北』の中でも一番目立つのは武藤と佐々木先輩、そして木上だった。自信に溢れる3人の姿に人々は再び熱狂した。
先まで騒がしかった隣の康二も静かに彼女たちを見つめている、さすが先輩の妹か…2年と3年の男たちはほとんど武藤に惚れていた。
「人気あるよなーあの3人。」
「そうね。」
応援団演技が終わってそろそろ走り種目の準備が始まる。
「そろそろ、行くとこだな…」
「100メートル?」
「うん。康二もリレーと障害走あるだろう?」
「なんで僕は…二つも出ないといけないのかよ…」
「お前が速いからだろう?」
「春木が行ったらいいのに…」
『まもなく、100メートル競走が始まります。参加する各クラスの皆さんは運動場に集まってください。』
いよいよ、走りの時が来た。
「春木、1位になれるだろう?」
「やって見る!」
運動場に行く時、俺は康二に言わなければならないことを伝えた。もう康二が迷わないように一言で決めようとした。
「俺は佐々木先輩の方がいいと思う。」
「え…?なんだよ、急に。」
「先輩の方がお前のことをよく考えているから言ってるわけ、そろそろ決断を下せ、俺はもう行く。」
「なんだよ…分かった。」
人の心はよく分からない、恋をする人はほとんど俺と同じ感じじゃないかと思ったら人々はそれより難しくて口に出せない理由があった。
お前もそうだろう…応援するぞ友よ。
「なんかおっさんみたいな…」
そんな考えをしながら俺は100メートルのスタートラインに立った。隣の人たちはけっこう速そうな体と外見をして、少しはびびる。
俺うまく出来るのかな…これは普通に走ることでもないし、点数とか人の視線もあるから肩が重くなった。
そう言って不安になっている俺に遠い場所から先輩の声が聞こえた。
「ハルー!」
先輩…?
「ハルー!頑張って!」
「せ、先輩…」
声が聞こえる方向を見たら、そこには俺を向いて腕を振っている先輩がいた。しかし先輩の応援に大勢の人たちが反応し、なんとなく俺を睨む気がして逆に緊張感が高まっていた。
実際にすごく睨まれていた俺であった。
でも嬉しいなー先輩から応援してくれるなんて、いけない全力で走りたくなった。
「はいー!みなさん準備はいいですかー?」
先生が出発の準備をしている時、学校まで全力で走ってくる人たちが息切れを堪えて高山高校に着いた。
「はあ…はあ…桜木くん、間に合った…」
「ほおー!ここか高山!ちょうど春木の出番じゃないか!」
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