第6話 魔の森でのキャンプ
薄暗い森の中を、エリザさんを先頭にして進んでいく。
「それにしても、アリーシャは赤魔導士とは珍しいな」
「そうですか?」
「ああ、赤魔導士は駆け出しだろう? それなのに、こんな危険な森を杖も持たずに、たった一人で迷宮都市のある隣国の商業国家ギランへ行くなんて、気概があるな」
「杖は……高いので……」
「そうなのか? 私の知りあいは、誰もが持っていたが……」
「それは、きっとお金持ちだからです!」
杖とかは、魔力を引き出すのが苦手な人が使うモノなので、魔導士でも上級になると、杖はあってもなくても変わらなくなる。
まぁ、国でも杖を使わずに魔導士稼業をしている人は限りなく少ないけど。
「べ、別にお金持ちという訳では――」
「――と、とりあえず格差社会の話はこのくらいにしましょう!」
「そ、そうだな……」
「それにしても、道はこっちで合っているのか?」
「そうですね」
私は地図を広げながら、コンパスを取り出し方角を確認する。
方向は間違っていない。
「とりあえず、食料もありませんから急ぎましょう」
「食料が無いって……、アリーシャ、この森を抜けるまで一週間は掛かるんだぞ?」
「何とかなります! 最悪、モンスターを倒して、モンスターを食べましょう!」
「そうだな」
食べられるモンスターが出て来てくれることに期待して、私とエリザさんは森の中を進む。
道中、モンスターは出るけどエリザさんが一人でモンスターを薙ぎ払っていき、私の出番は殆どないので、エリザさんにバレないように落ちている枝などをアイテムボックスにポイポイと入れていく。
「暗くなってきたな」
「そうですね……」
火種の魔法で周囲を照らしながら、進んでいた私達は、足を止める。
「あの、エリザさん」
「なんだ?」
「向こうに少し開けた場所があるみたいです」
「本当か? アリーシャは目がいいな」
「いえいえ。田舎暮らしだと目が良くなるので」
魔法で強化した視界と、周囲に展開した魔力察知によりモンスターの位置と、周囲の地形を把握していたので、すぐに提案出来た内容。
ただ、それを迷宮都市迄の同行者であるエリザさんに伝える必要はないので、黙っておく。
さらに、魔力察知により猪を発見。
ウィンドカッターで仕留める。
少し距離があったので地面を操作し、近くまで運びアイテムボックスに入れて開けた場所へ向かう。
エリザさんは丁度、薪の材料となる枝を集めていた。
その手慣れた手つきから、エリザさんは一人でよく野営などをしているというのを伺いしれた。
私はエリザさんの注意が私から逸れた隙をついて、アイテムボックスから猪と、道中に拾った枝を取り出し、地面の上へと置く。
「エリザさんっ!」
「どうした? アリーシャ」
「猪がとれました!」
「――何!? なかなか見事な猪だな」
「はい!」
「それじゃ料理は私に任せてくれ」
エリザさんは、自信満々に猪を颯爽とした動きで捌いていく。
私は、それを横目に枝を並べて炎の魔法で火をつけてからアイテムボックスからクローゼットを取り出し、ダブルベッドを取り出すと寝間着に着替えて寝る準備を進める。
「料理ができ――」
私の方を見て固まるエリザさん。
「アリーシャ……それは……」
「エリザさんの寝間着と寝る時はベッドがないと――って……」
つい快適な睡眠をとろうとして、ベッドを出してしましました!
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