ペンギン・ハイウェイ ー18.9.2.

監督:石田祐康



「そうかSFだったのか!」

小学生の主人公は勤勉だ。歯科医院のお姉さんにも興味がある。

そんな彼が住む町にペンギンが現れた。

様々な謎を観察、研究する中で主人公が最後に見極めることとなったものは果たして。


子供を抜け出し始める年頃の、だからして世界が自らへ門戸を開いてゆく転換期。

その心の微妙な描写と、妙にリアリティのある級友たちとのやり取りがノスタルジックで心地よかった。


主役はアオヤマくんよりお姉さんで、

自分だけの秘密を持てた時、子供は大きく成長するのかもしれないなとも思い返す。


SFを下敷きにしつつも、一辺倒と偏らないノンジャンルな物語は見ごたえありか。また清涼感ある映像とマッチした音楽も良く、クライマックスの疾走感には思わず息をのんでしまった。

原作未読につき、ぜひとも読んでみたいと思う一作。



ということで読んだ。

驚いたのはセリフも筋立ても、ほとんど原作とおりだったということだ。

たいがい二時間に収まらないため端折ったり、オリジナルエピソードを盛り込んだりして映画バージョンとして公開されることが多いのに、だ。

先に映画を見ておいたせいで、小説を読んでもシーンが補足のように浮かび、

文字として説明が加わることもあってなおよく、物語を味わうことが出来た。

これは想定外のよい結果だった。

なら果たして先に小説を読んでいた場合、同じような効果を得られたろうかということだ。

だが映画は小説を元に、かなり正確に創られていたのだから、答えはイエスだろう。

つまり文字での過不足ない描写(風景に関わらず)が絶妙だった、と思い知る。

この目に浮かぶように、がSF、またはファンタジックな世界であればあるほど難しい。

勝因として垣間見ることができる点があるとすれば、本作においてそれは街にいるはずもないペンギンや、水のような謎の球体という「取り合わせ」であって、異星人や新型兵器のように見た目からまるまる、奇異なものではないということだろう。

そこから引き出せることは、ファンタジーもSFも身近な素材で十分可能である、ということではないかと感じた。

だからこそのリアルも宿るわけで、

取り合わせ、という心理的なSF、ファンタジー要素さえ満たせば、

大仰に構えることなく親和性も高いまま、創ることができるのではないかと考えるのである。

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