海獣の子供 ー19.6.14.
監督:渡辺歩
「海と宇宙とわたしと命」
毎日を漠然と過していた子供時代の終わり。
生きるとは、ひいては生命とは、そして携えたあなたも自分も、うごめく万物もが果たして一体何者なのか。
意識せずにおれなくなった大人への入り口。その物語とみる。
独創性のある作画と高度なアニメーション、でしゃばりすぎない音楽が、難解で壮大なテーマを鮮やかと彩る。
眼福のまま漂う海中に息苦しさはない。
ダイナミックで力強い命の賛歌は、自身の中にも存在していることを主人公へ伝えている。そしてそれこそが誰にも否定することのできない原初かつ、最大の自己肯定感の源だとも。
なにはさておき、映像の素晴らしさを見るだけでも価値ありと感じている。
原作未読。
けれど映画で観る限り、難解な作品だなぁという印象が拭えない。
「命」をテーマにあつかう王道は、死と対峙させて尊さを際立たせるあれだが、
命そのものにフォーカスするような本作は否応なく、その神秘的な部分が抽象的かつ哲学的だ。
そのせいか実は釈然としない部分も多かった物語だが、言いたいこととというか全体から来るメッセージ、雰囲気は前述したとおり伝わってきたように感じている。
今回、ワタクシの理解力不足でこうなったのかもしれなが、いわゆる雰囲気ものというやつについて、陳腐にならない境界線はどこにあるのだろうか、と考える。
本作は内容を補完する映像の素晴らしさがあった。
なら映像のない文字の世界で雰囲気ものは成立するのか。
思わずにはおれず、それこそ洗練された言葉選びにより成り立つ者なのかと想像する。
ただし、洗練された言葉とははたしていかなるものか。
普段、口にしないような部類かそれとも、スタイリッシュなまでに簡素、システマチックなものなのか。正解の方向性すら定まっていない気がして、机上の空論にもこれまた思えてくるのである。
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