スノーデン ー19.10.12.
監督:オリバー・ストーン
「一種の記録映画として」
事態が起きた時、前代未聞のスキャンダルだと驚かされた。確かに過去、こうまでも個人が真っ向、国家の不正を内部から曝露するなどあったかどうか思い出せない。
タイムリーでニュースを追っていた時も、まさか逃げ切れるとは思いにもよらず、それこそ映画のような展開に唖然とした。
本作は実話を元に、CIA職員だったスノーデン氏が、国家が国民のみならず世界へ仕掛けていた盗聴に盗撮を全世界へ暴き、なおかつ亡命するまでを収めたものだ。
そして当のスノーデン氏はいまだ、ロシアだったかそこからさらに南米へ飛んだのか忘れたが、アメリカ国家から逃げ続けている。
さすが元CIA、すごい。
オリバーストーンという安定感が全編を通して裏切らない。
どれほどニュースで流れを知ろうと知恵者合戦の展開はスリリングだし、
スパイ映画として終ることのない倫理観への問いかけ、
はざまでの主人公の苦悩もまたよく伝わってくる。
ネット抜きに生活できない今、通して鑑賞者が考えを深めるにはもってこいだろう。
いずれにせよ前代未聞の大事件は記録しておくに間違いなく、
されたからには見て損のない一作だと鑑賞する。
唯一のマイナス点は主人公の仕事上、情報管理、システム周辺のシーンが多く、
ぼんやりでも知らない人には何がどうなのかわかりづらいかも。
しかしスノーデン氏、いうまでもなくキレものだ。
「fukusima50」の回でも述べたが、「ゼロダークサーティ」しかり、アメリカのこの手の国家を批判しながらもエンタメとして堂々、成立する、してもOKという文化は強い。
日本なら忖度丸出しになりそうだし、どこかの国なら監督がいつの間にか行方不明、もしくは公開処刑にでもされてしまいそうだ。
文句をつければ健全、とは言わないが、批判的視点に「多様」を見る。
この世に完璧なものはないというけれど、色々な立場があるからこそどこかに必ず欠点や補いきれない不都合は残らざるを得ず、つまり視点が多いほどそれは生じるものでもあるのだと考える。
つまりモノカキ作業の中において、自身の中にどれだけ多く他者が住まいしているかで自らの物語に欠けた点を見つけることは可能となり、
決して完璧を作り上げることはできなくとも、気付き考慮に入れることでより多様性を含んだ深みある物語になるのではないかと考えるのである。
そのために少しづつ自身の範囲を広げるという作業は欠かせないだろう。
そして自身を広げるためには他者に出会うほかない。
空想と妄想の豊穣にこそ現実と事実は必要なのだろう。
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