45(あかり視点)


 憧れの先輩と二人っきりになれた!

 何を隠そう、作戦通りです!


 そう、これは仕組まれた偶然、——偶然を装って金池先輩の部活が終わるのを待っていたわけで。わたし、こんなに大胆になれるんだって、正直自分でも驚いていたりする。

 背、高いなぁ。先輩の顔を見るのも一苦労だな。


「ど、どうしたの、あかりちゃん?」


 あれ? 先輩、赤くなった。どうしてだろ?


「あ、いえ何でもないです! おっきいなぁって、思っちゃって。わたし、チンチクリンだから」

「背が高くてもいいことないよ? よく頭打つし、やけに目立つし」

「そうですかぁ? わたしは憧れちゃいます。もっと伸びると思ってたんですけど、中三の時から全然伸びなくて」

「いいじゃない、小さくてかわいいと思うよ?」


 かわいい!? そ、そんなぁ、先輩にかわいいだなんて言われたら。


「あれ? どうしたの?」

「なななっ、なんでもっ、ありましぇん!」


 あー、もう! わたしの馬鹿! 何で素直に喜ばないのよ。絶対顔赤くなってるよね。気付かれていないかな? そ、そうだ、せっかく二人きりなんだから、聞かなくちゃ。確かめなきゃ。


「先輩? 先輩は部活、いつまで続けるんですか?」

「ん〜、そろそろ引退しないといけないんだけれど、中々ね。未練、かなぁ」

「ほら、か、か、か……」


 言うのよわたし! 確認しないと!


「彼女さん、とか? と、あ、遊んだ、り? し、しないんですか?」

「はははっ、ないない。彼女なんていないし」


 いない? フリー?


「えっ!? じゃあ、す、すす、好きなっ、ひぃ! と、とかは!?」

「あぁ、そうだなぁ。居る、けど、多分、実らない、かなぁ」


 金池先輩、悲しそうな顔。

 好きな人は居るんだ。フラれちゃったのかな?

 これ以上は聞けそうにないなぁ。


 でも、つまりは、わたしにもチャンスはあるってことだよね。わたし頑張る。金池先輩にこんな顔させるなんて、そんなの、先輩に相応しくない!


「そう言えば、今日は一緒じゃないんだね、さっちゃんと」

「……?」


 さっちゃん? とな?


「あ、ごめんごめん、紗凪ちゃんのこと。ほら、俺と木下って昔馴染みだし、小さい時からよく遊んでいたからさ。つい、その時のクセで」

「そ、そうなんですね〜」


 羨まし過ぎるよーっ、紗凪ちゃん!

 わたしも愛称とかで呼んでくれたらなぁ。ううん、下の名前で呼ばれているだけでも、今のところは満足よ! 背伸びは駄目!

 そうだ、今度紗凪ちゃんに相談しちゃおっかな。先輩のこと、もっと知りたいし。


 あー、わたし、恋してるんだなぁ。

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