38


 あかりちゃんと話したあと、皆と合流して昼を済ませ、陽が沈み始めるまで遊び尽くした僕たちは、ようやく帰路についているところである。


 ガタン、ゴトン、


 電車の座席、——対面の四人がけの座席で仲良く頭をゴッツンコしながら眠る天使たちがいた。


 何を隠そう、僕の妹と、その親友だ。


 その対面には鸞子がちょこんと、——まるでぬいぐるみのようにちょこんと添えられている。少し眠そうにしながらも、何とか意地で起きている。そういった雰囲気である。

 そして吊り革に掴まりながら窓の外の景色に視線をやり、それこそ僕イケメンでしょみたいな雰囲気で黄昏ているのは金池だ。



 夢咲に到着した頃にはすっかり暗くなっていた。

 紗凪は僕の背中で夢の中。相当疲れたのだろう。駅から近い僕の部屋に寄り紗凪を寝かせ、女子二人を家まで送ることにした。

 鸞子は必要ないとか言っていたけれど、いや鸞子こそ見た目幼女なのだから危ないだろうと説得し、家を後にした。


 さておき、家に送って別れる時、片目を瞑り僕に合図をするのは、あかりちゃんだ。


「お兄さん、ありがとうございます。金池先輩、あの、ま、また……」

「うん、また遊ぼ。今日は楽しかった」


 かのいけ〜! いちいちイケメンか!

 あかりちゃん、顔真っ赤になっちゃったよ。気付きもせずに、白い歯を光らせてんじゃないよこんちくしょん!


 その後、鸞子を送りかえし、ようやく男二人になれたわけで。


 僕は直球で告げた。


「入学式の日、告白されただろ?」


 金池は少し驚いた表情をし、やれやれと頭をかいて答える。


「うん、されたよ。でも断った」

「そ、そうか」


 やっぱり、金池は紗凪をフッている。


「俺さ、好きなんだ……」


 金池は人通りのない商店街の街灯を見上げる。


「俺、さっちゃんが好きだ」


 んんん〜? え? あれ?


「俺、ずっと好きだった。馬鹿だと思われるかも知れないけれど、あの日からずっと。小さい頃、さっちゃんが言葉も話せなくなってた頃、大人になったら結婚しよって、約束して……それから、話してくれるようになって……」


 待て。整理せねばならぬ。つまり金池は紗凪が好き。なのに、


「なら何故、断った。まさか僕のことを気にしたとか言わないだろうな!」

「こ、断ったって、……何を?」

「紗凪の告白だよ! 好きなら、何故断った!」


 思わず、胸ぐらを掴んだ。


「ちょ、ちょっと待った!? 俺が告白されたのは二年の馬場谷園烈子ばばたにえんれつこだぞ? 流石に即答で断ったよ!」


 馬場谷園烈子、だとぉ!?


 金池の話によると、その日告白して来たのは馬場谷園だけらしい。金池の表情が曇る。


「さっちゃんが、告白……」


 僕は金池にかける言葉を、失ってしまった。


 夏休みは続く。


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