5章 ウチらはともだち
第29話 ウチの表情
なんだか、ウチを取り巻く状況が変わってきた気がする。
なんか、居心地がようなった。
この間、クローバさんに
「……テスカさん。とてもいい笑顔で笑うようになられましたね」
言われてからや。
そう言われてから、なんだか状況が変わってきた気がする。
いい笑顔の自覚は無いんやけどな。
まぁ、仏頂面して怒りを振りまいていても、状況は良くなれへん。
それくらいはウチにかて分かるわ。
まぁ、それはそれとして。
今、ウチはストレッチをしていた。
もうすぐ、寺子屋で体育祭があるからや。
ウチ、別に運動得意やないけど、最近ノラハンターで色々やってよく動いているから、いつもよりはいい成績が出るかもしれへん。
別に1位取れへんでもええねん。
普段の自分より、いい成績を出せるかどうか。
そこが重要なんや。
ウチがそんなことを思いながら、座って前屈運動をしているときやった。
「テスカ、入るで」
オカンが襖をノックして、ウチの部屋に入ってきた。
「オカン、何?」
ウチがストレッチを止めて、顔を上げると
「……最近、アンタ、表情が明かるなってきたな」
「……そうなん?」
いきなり、褒められた。
そんなん言われてもなー。自分じゃ自覚あれへんしなー。
「前のアンタは、なんかいつも怒っとったよ。それが最近、のうなってきたように思う」
そっか……
でもそれは、ウチと友達になってくれはったヒカリさんや、気さくに話しかけてくれはるヨシミさんのおかげかもしれへんね。
あの人らに、世の中、敵ばかりやないって教えてもろたから……。
ウチが、オカンの言葉に深く染み入っていると。
オカンは
「テスカ、明後日の体育祭の事やけど」
本題を切り出した。
ウチの表情の話はメインやなかったんやね。
ウチとしては……
「店忙しいんやろ? 別にええよ」
こう答える心境にはなっとった。
寺子屋低学年のときは、よくオカンが体育祭に来てくれた。
でも、最近はそういかへんくて。
来てくれへん事が続いとった。
最初は悲しかったけど、ウチもそれがウチの事情なんや、おもて慣れてきて。
今ではこの通り、平気や。
やったんやけど……
「そんなこと言わんと」
オカンが、笑顔でウチの言葉を否定したんや。
えっと……
「オカン、このまんまやアカンおもたんや。だから、今度のテスカの体育祭に絶対に行くことにした」
え……
ウチはちょっと、信じられへんかったけど……
わざわざそんなことを言ってくれたオカンが、ちょっと嬉しかった。
「絶対に行くからな」
「まぁ、無理せんでええから。店優先でホントええから」
ウチは内心の照れと喜びを隠すように、無理せんでええ、を続けた。
ホントはメチャメチャ嬉しかったんやけどな。
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