第二十七話 引きこもり鑑定士を仲間にする

 フレンディア国へやって来た俺達は様々な国民たちが往来する姿を見て感動した。

 

 「こんなに人が多いんだな」

 「ですね。しかし平和です」

 「だな。巨竜が襲来するとは微塵も思ってないんだろう。まあ当然だが」


 誰もが巨竜が襲来するとは微塵も思っていない。

 だから国民の魔導士達は誰もが戦闘に備えてはいない。


 「私の幼馴染はこっちにいます」

 

 アイリスに連れられて俺はある宿屋へと赴く。

 ここにアイリスの幼馴染がいるのか。

 アイリスがある部屋をノックする。


 「何だうるさい」

 「私です。アイリスです」

 「何だアイリスか。入れ」


 アイリスは鍵のかかっていない部屋の扉を開ける。

 そして俺が見た光景は凄まじいものであった。


 「部屋汚っ」

 

 読み終えたであろう無数の本が部屋中に散らばっている。

 足の踏み場もない。


 「ラファ、貴女の力が必要なんです。協力してください」

 「嫌だ。私は物語に耽っているのだ。冒険者になる気は無い」

 「この国に巨竜が襲来するとしてもですか」

 

 アイリスの言葉を聞いたラファという少女は本に栞を挟みパンッと閉じる。

 そしてベッドの上からこちらを見る。


 「どういう事だ?」

 「現在エターナルと言うダンジョンから巨竜がこの世界に向かってきています。鑑定士の貴女が必要なんです」

 「それは真か?」

 

 俺を見るラファ。

 俺は大きく頷いた。


 「お前は誰だ?」

 「俺はレイン。アイリスとパーティーを結成している」

 「そうか。私はラフィア。アイリスからはラファと呼ばれている」

 「頼む。力を貸してくれ」


 俺とアイリスはラファにお願いする。

 ラファはそんな俺達を見て、こう告げる。


 「条件がある」

 「条件?」

 「私をパーティーに加入させたくば、毎日三冊以上の本の購入と、甘いお菓子の用意、そして私を楽しませろ。これが出来るのであればお前たちのパーティーに加入しよう」

 

 成程そう来たか。

 いいだろう。お金なら無限にある。

 本も、甘いお菓子も望む限り購入しよう。

 ネックは楽しませるか。だが俺には秘策がある。


 「よしその条件受け入れよう。お前を毎日楽しませてやる。先ずは巨竜の話だ」

 「交渉成立だな」


 こうして引きこもり鑑定士ことラファは俺達の仲間になった。

 

 「先ず座らせてくれ」

 「適当に座れ」


 俺は本をどかしてアイリスと共に床に座った。

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