第246話 学校潜入編34
「まず、こちらがいじめの概要になります」
砂橋が向かいに座る渡辺校長に説明をしながら、用意してもらったA4のコピー用紙に葛城颯太と祐樹の名前や矢印などを書き込みながら説明をしていた。
俺と七瀬はそれぞれ砂橋の隣と渡辺校長の隣に座り、お茶を飲んでいた。七瀬は浮かない顔をしているが、彼女の心中の考えは俺に解決できるようなものではないだろう。
「次に事件の概要です。だいたいは分かったので、全て話させていただきます」
砂橋の言葉を一言も聞き逃せないと言うように目にしっかりと力をこめて、砂橋の手元のA4のコピー用紙を見つめていた。
事件の内容は先ほど俺達に砂橋が教えてくれたものだった。
それに、熊岸警部からもらった死体の身元が判明したという情報を添えて、砂橋は事件の説明を渡辺校長にした。
渡辺校長は全てを聞き終えて、頭を抱えた。
「……そうですか」
いじめの加害者と被害者。殺人事件の加害者と被害者。
今回の事件は二人の間でほとんど完結してしまっている話なのだが、二人のしでかしたことが学校に与える影響は大きいだろう。
いじめだけでもマスコミは動くのに、いじめの末に起きた殺人事件となれば、マスコミが飛びつかないはずはないのだ。
「……ありがとうございます、砂橋さん。隠さずに教えてくださって……」
渡辺校長は汗もかくことなく、白い顔でただそれだけ言った。
「また報告書をお送りします。メールでよかったですよね?」
「はい……大丈夫です」
依頼人に報告書を送るというのは初めて聞いた。
いや、探偵事務所なのだからそういう事務作業があって当たり前なのだろう。
いつも俺は砂橋に連れまわされているばかりだから知らなかったが、砂橋がいつも依頼の報告書をちゃんと書いているのかどうかがとても気になった。
「……本当にいじめの被害者である葛城祐樹くんは、葛城颯太くんのことを殺害しようとして呼び出したんでしょうか?」
「それは警察の方からまた情報を聞き出したら、報告させていただきます」
砂橋はそれだけ答えて、席を立った。
もう俺たちにできることはないだろう。
顔面蒼白となった渡辺校長は席から立たずに俺達を見送るような余裕もなかったようだ。
もし、彼から講話の依頼が来た時は快く受けようと思った。
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