第71話 地震

「ウァァァ!! 地震だぁぁ!!!」

「あぁぁぁ どっどっどう うぅぅぅ」

午後4時24分宮城県南部を震源とする地震が発生した。

ドドッという音と共に突き上げるような縦揺れで、休日の夕方はパニック状態に陥った。

「ぎゃぁぁぁ!! ごわいぃぃぃ!!!」二階から階段を転げ落ちるように娘が降りてきた。

蛍光灯が揺れ、金魚鉢の水が跳ね上がり床が水浸しになる。

「おぉぉぉ!! じっじっ地震だぁぁぁ なっなにすっべべべ!!」口の回らなくなった妻はテーブルの下に頭だけ突っ込んで震えている。

「あぁあぁ 怖いずぅ~!!」

「なにゆてんの たいしたごどないがら ほだなどごさ潜てねで 出てこいず」

「なにが 落っできたら 何すんの!」

「もう 終わたずは」

揺れは間もなく収まったのであるが、妻の震えが止まらない。

東日本大震災以来、妻や娘は地震に対し極端に敏感になってしまったようである。


庭で植木の手入れをしていた父が怪訝な顔をして入ってきた。

「何だが 変なんだず...」

「なにしたのや?」

「今よ 庭の雑草取りしったら 風も吹いでいねのに 植木がガサガザ揺れるんだず」

「.....?」


「あぁ きもずいいな~」風呂に入っていた母がタオルを首に巻いて出てきた。

「なんとも ないっけが!?」

「なにがしたんだが?」

「.....?」


90歳を過ぎると、震度3程度の地震などは感じなくなるのだろうか。

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