第66話 魔力

「え~っ ほんて!!?」

唯一の独身としてベトナムへ連れてきた佐藤君が結婚したいと言うのである。

当然、相手はベトナム女性である。

「ほっ、本気なんだべな?」

「本気だっす!」

「本気ならいいんだげんと...」


ベトナムには魅力的な女性が多い。

それに、アオザイ姿には魔力も潜んでいるようである。

白いアオザイが制服の女子高生を見かけると、まぶしさでクラクラしてくるのである。

透けるようなアオザイを着た若い女性を見かけると、鼻血が出てくるのである。

オジサンでさえこの有様なのだから、若い佐藤君ならひとたまりもないのだろう。


「冷静に考えだんだべね? 国際結婚なんだがら...」

「マジメに考えたんだがら だいじょぶだっす」

「相手は何歳や?」

「二十歳になたばっかりだっす」

「おぉぉ~ 二十歳が~ 毎日アオザイ姿見るいんだべ うらやましぃ~」

アオザイを着た姿が頭の中を駆けめぐった。

想像が想像を呼んで意識が朦朧としてくる。

「.....」

「部長! だいじょぶだが?」


アオザイの魔力に溺れているのは私の方のようである。

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