第37話 「すず子」さん

12時のチャイムが鳴り、昼休み時間になった。

昼食は会社の食堂で食べることになっている。

もう、20年以上も同じような物を食べているので、いい加減飽きているのだが、この近辺には食堂もあまり無いので外に出かけることもできない。

事務所を出て階段を昇りながら何を食べようか考える。

考える程多彩なメニューは無いのだが、A定食B定食それともソバかうどんか迷うところである。

二階に上ったところで、食堂のおばちゃんに出会った。

「ありゃ部長 きょうよ んまぇものあっから たべでけろな」

「ほー なにほだえ んまぇものあんのや?」

「行ってみっど わがっから」

大した期待はしていなかったが、何があるのかと食堂に入った。


厨房室前のカウンターを見渡したが、これと言った物がない。

よく見ると、カウンターの前に赤い文字で「中味すず子」と書かれた紙がぶら下がっている。

(なかあじ すずこ)誰の名前かな? 

不思議に思い近づくと、皿に載せたおにぎりに表示してあるのだった。

この名前はなんだろう....あぁ! アハハ...

「おばちゃん! んまぇものて これが?」

「んだよ すずこのおにぎり つくたがら けーちゃ」

表示されていたのは「おにぎりの中味が筋子」と言う意味だった。

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