第33話 ミッキーマウス

相変わらず土日はゴルフ場で過ごしている。

メンバーは会社の同僚や仕事関係の付き合いだが、プレー中は言いたい事が言い合える楽しい仲間である。

夕方にラウンドも終わり、気分もスコアも上々でゴルフ場の浴室では鼻歌が出るほどであった。

この調子で明日もプレーできれば最高だ、などと思いながら帰宅し妻に着替えの入ったバッグを渡した。

「天気いぐて いがったなー」

「んだのよ スコアも いくてよ 最高だじぇ」

「あれ? 着替えたパンツ 入ってねよ?」

「うそー! どさ忘っで きたんだべ?」

「まさが ゴルフ場の風呂場さ 忘っできたの んねべね?」

「ん....?」

「あのミッキーマウス柄のパンツ 高いんだっけがらね」


翌日も同じゴルフ場に出かけた。

忘れたパンツもらってくるようにと妻に言われたので、フロントの若い女性に尋ねようとしたとき、忘れ物と書かれたショーケースが目に入った。

近づいてみると、帽子や手袋などと一緒にビニールの袋に入った私のパンツが一番前に陳列されている。

どうしよう....


「あのー ほごさあんの おれの....」

「はい ミッキーマウスのパンツですね!!」

(おいおい 大声出すなよ)

フロント近くにいた人々が一斉に私を見つめた。


その日のスコアは最悪であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る