第11話 探求心

左足の薬指と小指の間が妙にむず痒い。

靴の隙間から指を入れて掻こうとしたのだが、あと少しのところで届かない。

痒い...掻けない...となると益々痒くなるのが痒みである。

会議中でなければ、靴下を脱いでボリボリやるのだが、社長が出席しているのでは我慢せざるを得ない。


ようやく会議が終了し、席に戻って靴を脱いだ。

靴下も脱ぎ、痒い部位を指で広げ凝視した。

「ありゃりゃ~! こりゃマズイな...」

奇声に気づいた石黒係長が覗き込んできた。

「あーあ ほいずは水虫だべ~ みだだげでかぐなてくる」

「やっぱり んだべが...」

皮が剥け赤みを帯びた患部は、湿気のあるグチュグチュタイプ水虫の典型と思われる。

「この皮取って 顕微鏡でみっど 水虫菌みるいべが?」

「どうだべね...」

「石黒君 解析室さ 顕微鏡あるっけね?」

「あっけど... まさが! ヤッやめでけろね部長!」

「なにゆてんの 石黒君はエンジニアなんだがら 探求心が必要だべ サンプル提供すっからよ」


やり取りを聞いていた誰かが、健康管理室に連絡したようである。

看護師の赤塚女史がやってきた。

「部長! こだなどごで足だしてねで 部屋に来てけらっしゃい!」

「はい...」

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