風に吹かれて
おれは
風に揺れている
そして混乱している
折れ曲がっている
花に向かって敬礼している
頭の無い老婆に叱責されている
そしておれの服は汚れている
(一体、何をこぼしたのだろう………?)
全く記憶が無い
おれはおれではない何かへとすり替えられている
まるでおれみたいな
おれではない何かへ近付いている
顔面を触ってみると鼻が出っ張っていた
まるで現実感が無かった
丘の上へ視線を這わすと
イルカの群れが酸欠でばたばたと身体を波打っていた
本来そこにいるべきではない
だから苦しいのだ
幼稚園からは元気な複数の声が響いた
「野菜さんありがとう!」
まるで絶叫
感謝してるのだ
不穏な空気
おれはどうして自分がここにいるのかよくわからなかった
夕陽が沈む頃にイルカはやがてぐったりとした
寝たらしい
また明日になったらじたばたを再開するだろう
幼稚園児ももう物音一つ立てなかった
寝たのだろう
風が吹いていた
相変わらず
色々な角度から
優しい風だった
その度におれは揺れたし
真実も揺らいだ
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