間引き

 前回は台詞でむちゃくちゃに圧縮するという力技をやった。だが、見て分かるように描写をほぼゼロにしているので力技にも程がある。分からん。最近のネット発のやつとかあれくらいのいっぱいある気がする。けどまあ、多少は描写を残したい。


 そんなときは、間引く。


「じゃーん。昨日、田舎に行っててさ。せっかくだから日本の三大美味い雑草、菜の花、めちゃくそ摘んできたった」

 柿本人麻呂かきのもとのひとまろはパンパンに膨らんだスーパーの袋をムギに差し出した。

「それ、犯罪じゃないの?」

 ムギは訝しみながら袋を受け取った。草のくせに重い。開いてみると、

「菜の花?」

 店売りより明らかに大きい。長さは三倍、太さは倍。ブロッコリーに似た蕾は同じだが、茎が青紫色だったり、葉茎しかないのも混ざっている。

 柿本人麻呂だし雑草だからとからかっているのだろうが――。

 だったら、冷蔵庫に入れなくていいかな?

 ムギは野菜室に手を伸ばしたところで固まった。

「どしたん? 菜の花、嫌いか?」

 問われ、冗談には冗談で返そうとムギは言った。

「これだけあると五千円くらい取られそうだなって」

「田舎ならタダみたいなもんよ」

「……え? 本当に!? これも菜の花なの!?」

 頓狂な声をあげ、ムギは青紫の茎を柿本人麻呂に突きつけた。

「――コウサイタイ」

 柿本人麻呂は平然と言い、ひとつひとつ指差していく。

「のらぼう菜、チーマ・ディ・ラーバ、アスパラ菜、それから……」

「え、ちょ! さっき三大美味い雑草って――!」

 信じられないといったムギの顔に、柿本人麻呂が吹きだした。

「三大なら十種類は出すのが普通だろ。全部ひっくるめて菜の花だよ」

「……どういうこと!?」


 こんな感じで、雰囲気を残しながら短くするのを、私は間引くと言っている。嘘。いま思いつきで言い出した。だから今日が間引き記念日。蜜王みつおうマッチ。


 今回は先に元の文章を書いていないので、二窓で比べるとかしないと分かりづらいかもしれない。減っているのか。減っている。例の四二字×三四行換算で十行くらい短くなった。しかし、まだもう少し削れる。


「じゃーん。帰郷ついでに三大美味い雑草、菜の花、摘んできたった」

 柿本人麻呂かきのもとのひとまろはスーパーの大袋をムギに差し出した。

「菜の花? それ犯罪じゃないの?」

 やけに重い袋を開いてみると、菜の花にしては大ぶりな菜が詰まっていた。ブロッコリーに似た蕾は同じだが、茎が青紫色だったり、葉茎しかないのもある。

 まさか本当に雑草? とムギは冷蔵庫に手をかけたところで固まった。

「どしたん? 菜の花、嫌いか?」

 問われ、冗談には冗談で返そうとムギは言った。

「これだけあると五千円くらい取られそうだなって」

「田舎ならタダみたいなもんよ」

「……え? 本当に!? これも菜の花なの!?」

 頓狂な声をあげ、ムギは青紫の茎を柿本人麻呂に突きつけた。

「それコウサイタイ」柿本人麻呂は指差しながら言った。「そっちはのらぼう菜。アスパラ菜にチーマ・ディ・ラーバ――すごいだろ? 三大美味い雑草、菜の花は、十種類以上あるんだ」

「……どういうこと!?」


 どうだろうか。いつものページレイアウトで十五行である。いよいよ半分を切った。しかし、元の文章と比べてもらえば、大意は変わっていないのが分かるはず。分かって――いやでも、感じ方は人それぞれだからな……。


 で、こんなことをやって、ちょっと分かった。私の文章の特徴は、一文二意くらいを基調にしていること。それって普通のエンタメだとあんまり良くないのでは。

 

 ……分からん。こんな文章でも最終まで残ることもあるし、気にすべきはそんなところじゃない気がしてきてならん。

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