第51話 スタオッド伯爵との面謁②
翌日、この世界に来て二回目となる正装に身を包んだ
スタオッド伯爵家からの遣いの馬車は宿舎西棟一階にある出入り口の前で停車すると、中から身なりの良い初老の紳士が降りてきて宿舎の扉をノックする。
「
それほど大きな声ではないものの、貫禄を伴った重みのある声質はさすが伯爵家の人間である。
昼ご飯を食べた後、コルレットとロビーで遊んでいたネゾンも動き止め、声が聞こえた方向に視線を向けるのだった。
「この度は、ご足労頂き感謝申し上げます」
「ご丁寧な挨拶、痛み入ります。どうぞこちらへ……」
初老の紳士は馬車の扉を開けると、
メゾリカの街にあるスタオッド伯爵家の別邸は東西を貫く目抜き通り沿いにあり、ちょうどこの街を囲む外壁の中央に位置している。
馬車はそのまま白い建物の前まで進み停止すると、
「
初老の紳士が
「スタオッド伯爵様がお待ちになっております。こちらへどうぞ」
玄関で迎え入れた使用人の一人がスタオッド伯爵が待つ
スタオッド伯爵家は王国でも指折りの名家として知られるだけあって、
「
「どうぞ、お進みください」
案内した使用人が一礼をしたまま
「これは
この世界の礼儀作法にならって
「お心遣い痛み入ります」
「この度は我が家が統治するボルダ近郊での地竜討伐、見事であった。領民を代表して我スタオッドが感謝の意を表するものとする」
スタオッド伯爵は、書状を手に書かれている文章を読み上げていく。
てっきり
「さて、これで公式な
スタオッド伯爵は書状に記載された文章を読み終え、
「本来であればドラゴンスレイヤーの称号に相応しい舞台を用意すべきなのだが、色々と事情があって申し訳ない」
「いえ、こうして名高きスタオッド伯爵にお目に掛かれただけでも光栄です」
「ありがとうございます」
領主が一介の冒険者に直接飲み物を手渡すことなど本来有り得ないことではあるが、スタオッドと言う人物は特に気にする素振りも見せず、ユダリルム辺境伯に負けず劣らず懐の深い人物であることが窺える。
「
伯爵位を持つ者の申し出を
「私は気ままな冒険者ですので、スタオッド伯爵様のお時間が許す限りお付き合いさせて頂きます」
「今日は
立ち話が終わり、トレーを持って現れた使用人に空になったグラスを渡すと、昨日ゾッホが言っていた両領主の面子を潰さないように配慮しなければいけない恩賞の話になる。
「もし君が望むのなら、当家でその力を存分に発揮してもらいたいものだが……」
スタオッド伯爵が
「私などには
「ほう、それは冒険者としてではなく商人として事を始めると言うことなのかね?」
スタオッド伯爵は、ドラゴンスレイヤーの称号を持つ
「はい、仰る通りです。先日購入致しました場所にて店を開こうと準備をしております」
「それは、何処かの商会に属すると言うのではなく、新しい商会を興すと言うことかね?」
「はい。一から自分の力で始めようと考えております」
スタオッド伯爵は予想していなかった
「ところで
商業ギルドとは商いをする人が集まって構成される商業組合の総称だ。
王国内にも大小様々な規模の商業ギルドが混在していて、格や信用度の違いはあるものの、基本的には出資などお金に関する支援やトラブルの仲介など、商いに関わる人達の潤滑油として重要な役割を果たしている。
「いえ、お恥ずかしながら……まだ準備に取り掛かる前の段階でして、商業ギルドについては追い追い考えようと思っております」
スタオッド伯爵は
「では、恩賞とは別に当家が
王国でも指折りの名家であるスタオッド伯爵家が
スタオッド伯爵としても商業ギルドを紹介することで
「それは願ってもないお申し出、有難く存じます」
「新しい商いを始めると言うのであれば、恩賞もそれに準じた物が良いな……」
スタオッド伯爵は
「ならば、先ほど購入したと申しておったメゾリカ南部の所有地を
この世界での
「更に南西の門が商いの
更に、南西の門の開閉を他の主要門と同じように扱ってもらえるよう領主自らが手を回してくれるのであれば、
「私めのためにそこまでご配慮をして頂き、重ね重ね有難く存じます」
事前に考えていた以上の恩賞をスタオッド伯爵から
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