第54話 夕飯はどうしようか
「はぁ、何とかなったからよかったものの……」
村まで戻ってきて、ルスト会長と別れた後、おれは二人を自分の家に呼んで正座させていた。
「ごめんなさい……」
「ちょっとくらいなら、魔物除けの結界なしでもなんとかなるかなって」
「ただでさえ冒険者が増えて来てるんだ。用心棒以外にも、ああいうならず者が要るから注意してくれ」
村が発展するという事は、色々な人が増えるという事だ。それは銀等級以上の冒険者が増えたり、商人が増えたりすることも含めてのことだが、勿論ならず者や浮浪者が増えるという事に他ならない。
ちなみにさっきまで三人に襲い掛かろうとしていた奴らは、荒縄で縛ってギルド支部の留置所に収監される第一号~第五号になっていた。彼らは治安委員会に近々引き渡されることになっており、冒険者としての身分も剥奪されることになる。誘拐は未遂で終わっているし、誰かを傷つけてもいないので、略式の裁判を経た後に、オース皇国で再教育を受けることになるだろう。
「分かったわよ……反省してる」
言葉の割に不服そうなイリスだが、なんとなく「私でもメイちゃんだけを守るならできたんだからね」と言いたいのだろうと察して、深くは追及しなかった。ここで「一人増えたり、イレギュラーがあったりしたら対応できなくなるんだからやめろ」なんて言ったら、拗れて面倒なことになるのは目に見えているのだ。
「分かったなら、今日は飯食ってけ、旅立つ前のは変なのだったしな」
彼女たちが十分反省したのを察して、俺は二人を夕飯に招待する。多分アンジェとモニカは呼ばなくても来るだろうから、少し多めに六人分くらい用意しておけばいいか。
「え、いいの?」
「どうせ帰ってもガロア神父の――ってそうか、メイは家族が用意してくれるか?」
「あ、いえ、まだ夕飯には早いんで、言えば大丈夫だと思います」
よし、なら張り切って作るか、汁物がメインだったし、久しぶりに獣肉の香草焼きとかそういうのでも作ってみよう。
「じゃあ決まりだな、俺は準備するから夜までに自分のやること終わらせてきてくれ」
「はい、じゃあわたし、お父さんに挨拶とギルど支部に行ってきます!」
元気よくメイは家を出ていく。さっきまでしゅんとしていたのが噓のようだった。彼女が出ていったのを見送りつつ、俺は何故か残っているイリスに視線を向ける。
「な、なんだ? どうした?」
なんだろう、じっとこっちを見てる。何か不満があるわけじゃなさそうだが、普通に居心地が悪い。
「あの、さ……手伝っても、いいかな? 迷惑かけちゃったし、そのお詫びもかねて」
自信なさげにイリスがそう言って、両手を合わせる。
「ああ、それは助かるけど」
正直、六人前の食事を用意するのは中々骨が折れる。手伝ってくれる人がいれば、それに越した事は無いのだ。
「うん、わかった。じゃあガロアさんに伝えてくるね!」
そう言って立ち上がると、イリスもメイに倣うようにして飛び出していく。
……うちの村の女性はみんなパワフルだな。と、俺はそんな事を考えた。
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