第45話 当てが外れた
「へーそれでこんなに疲れてるっすか」
「そう……だけどっ、ぐっ……痛たたたたたっ」
なんとか家に帰ったものの、俺の身体は筋肉痛でバキバキになっていた。
なんとかベッドにたどり着いた俺はそのまま丸一日眠り、翌日起こしに来たアンジェに柔軟を手伝ってもらっていた。
「ニール、大丈夫だった……?」
「完全に無事……とは言えないな」
アンジェと一緒に来ていたモニカに答える。アンジェが入ってこれたのは、彼女が合鍵を持っていたからだ。
……冷静に考えると、家族でもないのになんであいつ合鍵持ってるんだろうな。
「魔力収束炉が壊れたんだ。修理も難しいだろうから、何とかならないかとは思ってるんだが……たしか端材は保管しておいたよな?」
「!?」
モニカは身体を大きくびくつかせる。それと同時に目に入る真新しい象牙の杖。
「ご、ごめんなさい……私――」
「いや、元々モニカ達がとってきたものだからな、それは仕方ない」
宛てが外れたのは困ったが、モニカの装備強化に使ったなら仕方ない。何とか工房で杖か何かに再構成できればいいんだが。
「っ……ふぅ、助かったよ、アンジェ」
「お安い御用っすよ!」
筋肉痛はいったんストレッチしてしまえば、しばらくは痛みが抑えられる。身体にまだ違和感はあるが、とりあえず動くのには支障はなさそうだ。
「ところでニル兄っ!」
「どわっ!?」
立ち上がり、壊れた魔力収束炉が入った袋を持ったところでアンジェが背中に飛びついた。
「なんだよアンジェ、飯なら買出し行かないと材料自体ないぞ」
「ぶー、そうじゃなくてっすねえ……しばらく離れ離れだったのに、なんも言うことないんっすか?」
「ん、ああ、ただいま」
「それだけっすかー? 他に何かあるんじゃないっすかー?」
いや、無いだろ……背中に引っ付いたアンジェをはがそうとするが、がっちりとつかまれていて離れそうにない。
「分かるまで引っ付くっすよー」
「邪魔だからやめ――ん?」
無理やり引きはがそうとしたところで、モニカに服を掴まれる。え、何? お前もなの?
「……」
彼女は俺をじっと見つめてくる。どうやらこいつもらしい。
「はぁ……二人とも、邪魔をするなって」
何とか引きはがそうと体をねじるが、筋肉痛により上手く体が動かない。
「ニル兄ー、言う事が分かんないとアタシは剥がれないっすよー」
「ああもう、いい加減に――」
「ニール、帰ってきたなら挨拶くらいしなさ、い……よ」
アンジェの服を掴んで引きはがそうとした瞬間、イリスが部屋に入ってきた。
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