第33話 第六の罪源2
小鬼の首が天井にぶつかってから足元に落ちる。カインの性格はともかく、剣の腕だけは信用できる。俺たちの支援もある今、カインなら銀等級の魔物相手でも後れを取る事は無いだろう。
「手応えねぇなあ! 雑魚ばっか送り込んでんじゃねえよ」
「気を抜くなよ、俺たちも死にかねないんだ」
剣を一振りして血を払うカインに、俺は冷静に声を掛ける。罠を仕掛けるだけの時間は無かっただろうが、後方からの挟撃や伏兵の出現など不測の事態は簡単に起こりうる。敵を倒して高笑いしている暇は無いはずなんだ。
「みんなでダンジョンを攻略していた頃が懐かしいわね」
サーシャが思わせぶりな視線をこちらに向けてくる。
まあ元はと言えば、俺がブチ切れてパーティを抜けたのが崩壊のきっかけなので、責任を感じない事もない。
「……できなくなったのはカインのせいだろ」
「そうね、でもあなたは気付いてるでしょ?」
サーシャは頬を緩ませると、弓を番えて小鬼の群れに矢を射かける。ほとんど無造作な動きだったが、それでも狙いは正確で、眼窩や咽喉に矢が突き刺さっていた。
「ああ……原因はあいつだけどきっかけは俺だよ」
前方で大型の魔物相手に、下品に笑いながら剣を振り回しているカインを見つつ俺は呟いた。
俺は間違いを認められる。あいつと違って大人で冷静な人間だからな。
「カイン、前に出過ぎだ。支援が届かなくなる」
「あ? ……っと、悪い。深追いし過ぎたな」
支援魔法の範囲外へ突っ込んでいこうとするカインに、声を掛けると気持ち悪いくらい素直に戻ってきた。
「つーかおせーんだよ、もっとガンガン行こうぜ」
「奇襲と罠に対応するにはこれが最高速度よ、少し堪えて。それとも、一人でもなんとかできるつもり?」
「ちっ……分かった分かった。ペース落とす」
サーシャの忠告を素直に聞いている……なんだこいつ、一回死んで頭おかしくなったのか?
「サーシャ」
上機嫌で最前列を歩くカインの後ろで、俺はサーシャに話しかける。
「カインって、こんなにまともだっけ?」
「私の記憶だと……もっと自己中心的で欲望に忠実で他人を何とも思ってないような性格だったわね」
あんまりにもあんまりなサーシャの言葉に、俺は引きつった笑みを浮かべるが、概ね俺と同じ意見なようで安心もしていた。
以前までだと確実に俺たちがペースを上げて、その結果奇襲を受けて、散々な目に遭いつつ切り抜けるというのが、いつものパターンだ。
「案外、ニールが抜けて反省したのかも? 丁度抜ける前はダンジョン踏破の依頼だったじゃない」
「謝罪の言葉は無いし、モニカに対する色々は擁護できないけどな」
そう言いつつ、俺は五人で行った最後の依頼を思い出していた。
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