第27話 復讐の刃2
その言葉を聞いて、手が止まる。
「そんな大事なものは受け取れない。俺は道具の扱い乱暴だし、実際何本もナイフを折ってきたんだぞ」
「道具をつかうなら、そりゃ壊れるさ。それに見ての通り最硬度のダマスカス加工がされている。ちょっとやそっとで壊れる事は無いよ」
いや……確かにそうなんだが、他人の形見をそうそう簡単に使えないだろう。
「もっと言うと、それは製造時点から一切メンテナンスを行っていない。それでこの脇差の丈夫さは分かって貰えるかな?」
「……なるほど」
倭刀はメンテナンスが難しく、かつ頻度も高い。そんな代物が手入れ無しで放置されたら、間違いなく錆や黒ずみで切れ味が落ち、最悪の場合鞘から抜くことすらできなくなるだろう。
しかしこの脇差は鞘から抜く瞬間も一切の抵抗を感じなかった。つまり、錆も不純物も付いていないという事だ。
「だけど、何にしても敵討ちしてくれって言うなら、俺は受け取るわけにいかないぞ」
「――、それはどうしてかな?」
俺の言葉に、一瞬リクの目が鋭さを持つ。首を絞めつけられたように錯覚するが、それでも俺は言うべきことをつづけた。
「復讐はするべきじゃない」
俺はオース皇国での一件で、復讐の為に狂った人間を見た。
知った風な口を利くなとか、自分がそうなった時に同じことが言えるのかとか、色々あるだろうけど、行きつく先がハヴェル神父と同じなら、周りの人が止めるべきだろう。
「俺たちがやるのは、罪源職を倒し、遺物を奪還して、シズを助ける事だ」
ギルド支部設立の為とか、そういうのもあるが、今の喫緊の目的はこれだ。復讐に目標を合わせると、大事なことを見失うことになりそうだ。
「……」
リクは俺の言葉をゆっくりと噛みしめ、吟味しているようだった。
俺だって、エレンやユナ、あの村の人々が殺されたら復讐者に堕ちるだろう。それでも、きっと「まだ体験していない人」が俺を止める。そうじゃなければこの世界はどんどん殺伐としていく一方だ。
「ふぅ、分かったよ……確かに、今は復讐だの何だのしてる場合じゃない。シズの足を取りかえすことが先だ」
リクはそう言って肩をすくめる。その姿は、いつもの胡散臭い調子に戻っていた。
「でも、その場合でも脇差はもっといて欲しいかな?」
「え?」
俺は思わず聞き返していた。ここまで言って、俺の言いたいことが伝わっていないのだろうか?
「だって、ニール君は僕とかシズ姉さんとか、ジンに比べたらクソザコじゃん。せめて武器くらいは良い物使ってよ」
「……おっしゃる通りで」
さっきの会話の反撃か、割と痛いところを的確に突かれて俺は苦笑いを返した。
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