第14話 DSF(デッドリーシンズ・ファウンデーション)
「なあ、ちょっといいか?」
ギルド本部から出て行こうとする女剣士を呼び止める。
「……」
彼女は返事を返す事は無かったが、足を止めて振り返ってくれた。
この地域特有の黒髪黒目、服装も含めてほぼ真っ黒な彼女は、威圧感がある。
「あんたの仕事、手伝わせてくれないか?」
「必要ない」
俺の提案に、彼女は即答すると肩にかけた布を翻した。
「ちょ、ちょっと待てよ! 俺たちは銀等級だ。足手まといにはならな――」
進路を塞ぐように回り込むと、彼女はギルド登録証を見せてきた。
登録証には様々な情報が書いてある。名前、所属、年齢、等級等々……
その中で、ひときわ目を引く項目があった。
「これでも足手まといにならないと言えるか?」
白地に金の縁取りで描かれた大きな印章は、白金等級――彼女が最高峰の戦力を保有していることを示していた。
等級は下から木、革、鉄、銅、銀、金の他に、最上級を示す白金等級がある。魔物であれば炎竜(ファフニール)や巨獣(ベヘモット)など、国家規模の討伐部隊が必要な存在、冒険者であれば人類にとって絶対に必要な存在が彼らだった。
「いや、そのー……」
彼らにしてみれば大鬼や氷竜程度は出会い頭に殺せるような存在であり、それらに苦戦するような人間は、戦力とすら見なしてくれないのも当然である。
「偵察とか情報収集なら役に立つでしょ? 白金等級とはいえ人手は必要だと思うけど」
言い淀む俺をかばって、サーシャが言葉を続けてくれる。
「なるほど、それで、手を貸す理由は?」
「DSFってやつらが悪さしてるんだろ? そのせいで手続きが遅れてるんだ」
しかし、DSFってどっかで聞いたことあるな。どこだっけ? なんかすげえ大事な時に聞いた気がするんだが。
「……」
彼女はしばらく考えた後、右手を差し出してきた。
「私は桐谷静……シズでいい。白金等級の冒険者だ」
「シズ、やっぱ少数民族同盟の名前は特徴的だな」
俺はシズの手を握り、握手をする。白金等級の人間とは思えないほどしなやかで、柔らかな肌だった。
「さっそく働いてもらうぞ、まずは情報収集だ……口に奇妙なマスクをつけた男の情報を探している」
「奇妙なマスク?」
俺が問い返すと、シズは頷いて言葉を続ける。
「貪食者、DSF第六烙印を標榜する危険な男だ。牙のような装飾のあるマスクを常に付けている」
第六烙印……DSF……そこまで言われて、俺は思い出す。
『私はDSFの第三烙印――ラースです」』
「……ハヴェル神父」
そう、彼が所属していた犯罪組織がDSFだ。俺は無意識に彼の名前を呟いていた。
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