第52話 魔物が得意とする方法
「ニール……?」
魔法を打ち消された反動で視界が不安定になる。モニカが心配そうな声を掛けてくれるが、問題は俺に起こった反動ではなかった。
「っ……妨害された。相手側に魔法の素養がある奴が居る」
たしか、最初にこの村から逃げるときには、豚鬼か、居たとしても大鬼クラス、その程度のはずだった。この半年間でさらに戦力を増やしたのか、あるいは……
「ガロア神父、教会に隠した遺物はぜったいに魔物には見つからないようになってるのか?」
「あ、ああ……偽装は完璧だし魔物程度の知能では仕掛けを解除することも出来ないはずだ」
「……じゃあ、魔物が得意とする方法に対処はしているのか?」
「魔物が得意? ……あ」
魔物が得意とする方法。つまり、破壊をはじめとする単純な暴力。それに対抗する手段がなければ、ただちょっと深いところに埋められただけの宝箱と何ら変わらないことになってしまう。
そして、俺は彼の反応をみてすべてを察した。
「……遺物、村から逃げるときに持ち出すべきだったな」
「め、面目ない」
小さくなるガロア神父だったが、よく考えれば遺物目当てに追撃部隊が編成される可能性を考えれば、苦肉の策だったのだろうとも思えた。
「で、どうするの? 探査眼使えないなら見てくるけど」
そんな俺たちを見かねて、サーシャは弓手特有の視力を活かした偵察を提案してくれる。
「悪いが、そうしてくれるか? ただ、探査眼が潰された関係上、相手が警戒しだしている可能性がある。慎重にな」
「了解、ちょっと待っててね」
そう言うが早いか、サーシャは木の幹を滑るように登り、葉の陰に隠れつつ進んでいく、枝の擦れる音は風による物と見分けがつかず、これならば魔物に見つかることも無いだろうという安心感があった。
モニカは集中を開始して、必要であれば魔法を撃てるよう警戒をしている。
アンジェと俺、そしてガロア神父は、周囲の状況に気を配りつつ、魔物が見えた時点で処理できるように待機している。
「……っ! 加速っ」
一歩、近くまで迫っていた、豚鬼の首をナイフで切り落とす。
二歩、周囲を見回し、もう一体近くに居るのを確認。声も上げられず絶命した豚鬼を、地面に引き倒してその反動でそちらへ向かう。
三歩、同じように処理して、周囲を確認、問題が無いようなので、最後の一歩で仲間の場所まで戻る。
「――ふうっ」
「あ、ニル兄、向こうから近づいてくるような……ってあれ?」
「今回は、俺の方が先に気付いたな」
首をかしげるアンジェの頭を撫でつつ、俺は再び警戒する。アンジェの鼻が利きづらいという事は、周囲に複数の魔物が既にいる事を示していた。
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