第44話 採取中の談笑
――至高の一矢(サジタリウスアロー)
弓手が持つ最高クラスの高威力攻撃。自分の筋力を超ええた力で弓を引き絞り、天高く矢を放ち、時間差で対象に超威力の貫通攻撃を放つ。その威力は竜種の頭蓋さえ貫き、命中すれば一撃必殺の攻撃となる。
「よくやったわねアンジェ、誘導は完璧だったわ」
「ありがとサシャ姉! 騎士職冥利に尽きるっす!」
はぎ取り用のナイフで、呪象の牙を根元から削り取りながら、サーシャとアンジェは上機嫌に話す。
「二人とも、無事でよかった」
非力なモニカは二人の作業を見守っていたが、安心したようにそう口にする。
魔物集落討伐のとき、身をかがめていたニールとユナには雷帝降臨が当たらなかったのをヒントに、呪いによって下がっていた威力を魔法のレベルで補ったのは成功だった。
三人の作戦はこうである。
まず、体力を削って呪縛体質を発動させる寸前に、デバフの掛かっていない筋力でサーシャが至高の一矢を撃てるだけ撃つ。
次にサーシャとモニカが全力でサポートしつつ、アンジェが着弾地点まで呪象を誘導する。
最後は至高の一矢が呪象に当たり、倒したのを確認すると同時に、モニカが広範囲魔法で雑魚を一掃する。
この時はまだ呪縛体質のデバフが効いているため、拡散操電では威力が足りない。そこで使われたのが、回避が容易で、威力も高い雷帝降臨だった。
「ちょっとヒヤッとしたっすけど、まあ結果大丈夫だったんでオッケーっすよ!」
「ええ、本当に肝を冷やしたわ……」
アンジェは笑い、サーシャはため息をつく、二人とも違う反応だが、その根底にあるのはモニカへの信頼だった。
「呪象の牙は二つ取れたけど、片方はどうしましょうか」
「売っちゃっても良いんじゃないっすか? 結構な額になるでしょ」
アンジェの提案に、モニカは首を横に振った。
「呪象の牙なんて貴重素材、滅多に手に入らないから取っておくほうが良いと思う、お金は他の手段でも増えるけど、素材はものが無ければ買えないし……」
「む、確かに」
「実際、欲しい時に限って、どこにも売ってなかったりするのよねえ」
サーシャは愛用の松脂がないせいで、二日掛けて自力採取に行ったことを思い出しながら、しみじみとそう言った。
「うん、だから両方持って帰ろ? 初めて見る素材だから、モニカも手元において調べたいし」
「……」
嬉々として語るモニカに、サーシャは怪訝な表情を浮かべて軽く唸ると、ニヤリと笑った。
「モニカ、調べたいなら正直に言いなさいよ」
「え、えっ!? ち、ちがっ……わ、ないけど!」
急にあたふたするモニカを見て、二人は吹き出した。
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