第41話 絶縁素材を求めて1
「よし……がんばろうねっ、みんな」
モニカは全員に向き直り、両手を握りしめる。
「やるっすよー! カバーリングは任せてください!」
アンジェが大盾を掲げて宣言する。
「はぁ、何でこんな事になってるのかしら……」
そして、サーシャは頭を抱える。
三人がいる場所は、村から遠く離れた位置にある平原地帯で、そこに生息するとある魔物が今回の目的だった。
話は数日前にさかのぼる――
「駄目……どの素材も絶縁係数が低すぎる」
モニカは訪れた商人たちから、質のよさそうな杖の材料を見せてもらっていた。
杖の素材としては、基本的に三つの物が必要だ。
一つ目はそれ自体に魔力を持つ魔力核、乙女の体毛や八咫烏の風切り羽などがそうだ。
二つ目は強度があり、一つ目の物を収めることができる外殻、オーク材や氷竜の大腿骨がそれにあたる。
そして三つめは一切魔力を通さない絶縁材、杖内部にしっかりと魔力を溜め込み、術者の意識で一気に解放できるような、蓋としての能力が、それには求められる。
急造杖では石灰岩が使われていたが、強度に不安があるため、広くは使われていない。小型で、絶縁能力が高い水晶などの素材は、やはり高価だった。
「もっと、係数の高い素材を……」
しかし、高価なだけなら資金を用意すればいいだけである。今回の問題はそうではなかった。
八咫烏の風切り羽も、氷竜の大腿骨も、両方とも魔力を帯びているゆえに、普通の絶縁素材では魔力に蓋をし切れないのだ。
もし水晶で絶縁材を作るとすれば、人が持ち上げられない重量になるだろう。それほどまでに他の素材が強力だった。
おそらく、絶縁材の入手が困難だからこそ、ニールはこれらを杖の素材として使わなかったのだろう。モニカはそう考えていた。
「! そうだ、呪象(カース・エレファント)がいれば……」
呪象とは、金等級の凶暴な魔物である。強力な魔法耐性を持ち、特に象牙の芯は最高の絶縁係数を誇るものの一つだ。
「みんなを呼んでこなきゃ……」
そうと決まればすぐにでもみんなを集めて討伐をしよう。そう考えてモニカはサーシャとアンジェに声を掛けに行ったのだった。
「魔法職は凝り性って、本当にこのレベルで凝り性なのよね……」
半ば呆れたようにサーシャが言う。
「ま、良いんじゃないっすか? 商人相手の化かし合いよりは、こっちのが分かりやすくて好きっすよ」
「まあ確かにそうなんだけど……」
アンジェの言う事に同意しつつ、どこか納得できていないサーシャだった。
「ご、ごめんね……こんな近くに、呪象の生息域があるとは、思わなかったから……」
「近くに居なかったらエルキ共和国の国境も超えるつもりだったでしょ、モニカ」
「う……」
申し訳なさそうにするモニカを、サーシャは頭を撫でてやる。
「しょうがない、早く片付けちゃいましょう……アンジェ、私が釣ってくるから、雄叫び(ウォークライ)でしっかり引き寄せなさいよ」
「了解っす!」
びしっと敬礼をした姿を見て、サーシャは呪象を探しに平原を駆けていく。
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