真面目委員長キャラは俺のことが嫌いだそうですwww
それからあっという間に休みが終わり再び、平日学校に行かなければいけない日がやってきた。
俺はいつも通り朝6時に目覚めた。俺は徒歩で通学できる距離であるため、家を出るには後2時間ほどある。いつも通りである。
しかし月曜日という日は憂鬱なもので、その時間が経つにつれ、俺は本当に学校にいかなくてはならないのか?という疑問が生じてくる。いかなくてより理由なんどこの俺にかかればいくらでも出てくる。そしてその理由は説得力もある。そうするとだんだんあれ?俺学校行かなくてもいけるんじゃね?などと思うが、学費を出してもらっており、かつ学校に行ったほうが結果ダラダラせずに過ごせる気もするので結果的に行くことになるのだが……そう考えると俺は結局のところ真面目ということだ。
などとくだらないことを考えながらベットを整え、俺は朝目覚めの一杯として水を飲みし、俺は今日の弁当を家族全員分作り始める。昨日の晩の残りプラス作り置きしてあったきんぴらごぼうなどを詰める。加工食品は極力避ける。うん実に美味そうな弁当だ。もっとも色は茶色いが。しかし土師ノ里家はこれでいい。茶色で文句を言う奴はいない。上手ければ文句など言わないのだ。見た目は二の次だ。
そして俺は朝の仕事を終え、コーヒーを入れ始める。毎日のことだ。やっぱ朝はコーヒーだよな!
「おはよう」
どうやら舞も起きてきたようだ。土師ノ里兄妹の朝は早いのだ。
「おはよう」
俺も入れ立てのコーヒーを飲みながら返事をする。
舞はコップに水を入れ、それをぐいっと飲み干すと、テキパキを自分の朝食の準備をする。
「お兄ちゃん、よく朝食食べなくていけるよね。私には無理」
自分が用意した食事を食べながら言う。ちなみにメニューはバナナに暖かいスープ、実に健康的だ。
「慣れたら案外いけるぜ?それに健康も害は出てないしな」
俺は朝食をとらない派である。朝食がいいかは諸説あるからなんとも言えないが、俺は別にいらないと思っている。舞は食べたい派である。どっちが正しいかは、俺たちが研究しているわけでもないからわからない。だから食べたい人はしっかり食べ、食べる必要ないと思う人は食べなければいいのである。食べたり食べなかったりはあまりよろしくはない。
「お腹空かない?」
「いや別に」
俺はそう言いながらテレビをつける。だが朝のニュースを見るわけではない。テレビでネット配信動画を見るのだ。見るのはキャンプ動画、ただただキャンプしている動画を写しているだけだが、かなり人気のあるものだ。
やはり自然というものは人を惹きつけ、癒されるのだろうか。事実俺もこれを見るとストレスが減っているように思える。
最近朝これを見るのにハマっている。漫画と友人のせいでなのだが、まぁ悪くない。マイも最近ハマりつつある。
「これ見てると私もキャンプに行きたくなるよね」
「まったくだ、ソロで行くのもありだよな」
ちなみにキャンプはお金がかかると思っている人もいるが、それはこだわればの話だ。ソロキャンプなどでは上手いことやれば3万円前後で装備は整う。そして宿泊費はフリーサイトならば1000円ほどで住むのだ。長期的にやるならば案外安上がりだったりする。
例えば、テントなんかも今や安いものは安い。某ネットショッピングには2000円のテントがあるが、これはあまりよろしくない。俺の身長178㎝なら小さいらしい。まぁ動画等で知ったから確証はないが、しかし最近関西に上陸したフランス発のスポーツ用品店には高品質なソロテントが出ている。それも値段は3000円ほどとかなりお得である。またアウトドアの祭なども開かれており、そこで物によっては安く買えるものもある。かくいう俺も蒼太に連れられてそういうのを買った経緯を持つ。
「まぁ折角だし、機会があったら行くか?」
「うん、そうだね」
これでまた一つ楽しみが増えたようだ。俺がそのことを喜びながら、そろそろ迫りつつある登校に備えて準備をし、少し早めに家を出たのだ。
午前の授業が終わり、昼休みに入る。周りは授業中の静けさから一転実に騒がしくなる。休み時間なのだからどう過ごすかは自由だが、俺はこの騒がしさが苦手だ。
もっとも高校生にもなれば学食などに向かう連中も結構多いので、少しするとその騒がしさも随分マシとなる。
「さて飯を食おうぜ」
蒼太が弁当を片手に俺に近づいてきた。その後ろには潤もいる。飯はだいたいいつもこのメンツだ。
「なあキャンプにいかないか?」
弁当を食べていると蒼太は急にそう提案する。
「あぁいいぞ。まだ夏ではなく結構涼しいしな」
俺は迷うことなくその提案に乗る。
「あぁ、雨さえ降らなければいい時期だ」
キャンプ=夏というイメージがあるが、俺たちの間、少なくとも俺と蒼太の間ではその認識はない。むしろ夏は暑く、何より虫が多くキャンプをする季節の中では一番嫌いなまである。しかもそのイメージのせいで人も多い。俺は秋ごろのキャンプが一番好きである。
「でもいいのか?そろそろ中間試験だぞ」
潤が心配そうに見つめるが、俺と蒼太にとってはその心配は全くもって不要だ。
「まったく問題ない。すでにテスト範囲の勉強は大方終わっているぜ」
「同じく」
俺の一年時の最終成績は学年7位、蒼太は確か9位だったはず。俺たちは勉強は一応しっかりこなしているのだ。そして今回も同様にしっかりと勉強している。心配されるべき人間とする人間が逆だと俺は言いた。
「お前は大丈夫なのか?お前は苦手科目が結構多いだろ?」
俺がそう問いかけると、潤はあからさまに俺から視線を指す。それを見て俺は理解した。視線というのは実に雄弁だ。
「仕方がない。大方深夜アニメなどを見ながら決して他人に見せられないような顔をしてたのだろう」
「おい!それは違うぞ!他人に決して見せられない顔だと!あれは素晴らしい光景を見て感動で心が動かされた表情だ!それはむしろ人間の心を表したものだ!そう何も包まず裸でな!だからあの顔は決して他人に見せられるものではないというわけではない!」
ここにきて実に雄弁に演説をする潤。確かにアニメにはなかなか素晴らしい光景があり、最近では情報が民主化された流れか、SNSでもそのような画像が流れてくる。そこに心打たれるのは理解できる。この中で一番アニメに疎い蒼太もそれは理解してくれる。実に尊いものだからな。だが、その画像等を見ている顔はというと、残念ながら理解がある人間でもまぁあまりよろしい顔ではないと言わざるを得ない。少なくとも尊いと言われるキャラの表情とそれを見ている人間の表情とでは月とスッポン。比べることはむしろそのキャラを陥れることにもなりかねないと思えるほどだ。
「それが裸にした人間の本性だというなら、実に醜いな。あながち性悪説は間違っていないと思えるほどだ。荀子の主張が少し深く理解できたかもな」
「だから荀子は、人為的な教育を施させる事が大切といったんじゃないか?学問の必要性は理解できるからスタートはともかく、結論は賛成だね」
「……蒼太、なぜお前は毎回独得な口撃をしてくるんだ。俺はどう反応していいのかわからないぞ……いっそキモイ、ウザいとストレート言われた方が反応しやすいぜ。あと俊もそっちにいかないでくれ」
潤は困惑した表情でそう呟く、社会が苦手なこいつにはきつかったのだろう。
「そいつは済まなかった。つい癖でな」
笑いながら蒼太は謝罪する。本当にこいつは相手を貶すときは楽しそうだ。
「それで実際のところどうなんだ?お前はしっかりやっているのか?」
「あぁやっているさ。しっかりと授業中に!」
「つまり家ではやってないと」
「まぁやってないよりはマシだろうがな」
潤の発言は堂々と授業中に内職をしているということであるが、俺も蒼太もそこには突っ込まない。なにせ俺たちもよくやっているのだからな!
「……物理など理数系が得意なんだからあとは文系科目をチョロとやって、あとはお前が大の苦手である英語に今から全力を投入すればかなり上位に食い込めると思うがな」
蒼太が言うように潤は理数科目が大変良い。特に物理と化学がかなり得意だ。数学はマァ勝てるときは勝てるが、その二つは勝てた試しはない。決して頭が悪いわけではない。ただ非常に残念ながら英語は壊滅的である。しかし高校のカリキュラム上英語は色々小分けにされて授業があるからテストも複数ある。潤にとっては最悪以外何者でもないであろう。
「それができたら苦労しないんだよ!だが人間というは実に不思議なんだ、いざやろうとしていたら気づいたらアニメワンクール見てるんだよ。一年最後のテストなんかうっかりテスト前日に三クール見てしまったぐらいだぜ」
「それはまた随分派手なうっかりだな、自称天然女子もびっくりだぜ」
「ああ、だがおかげでまたアニメの知見が増えたから結果満足だけどな!アニメを作った人々もこれにはニッコリだ!」
満面の笑みでそう告げるが、その時のこいつのテスト結果は残念ながらにっこりではなかったのだが、というか悲惨だった。赤点(この学校では40点以下)が文系科目全てだった時には流石の俺もびっくりだ。しかもかなり軟化して平均点も10点以上上がってのこれだから、先生もビックリだったろう。
「まぁ知識の定着を兼ねて勉強教えてやるよ。だから今日にでも俺の家に来い」
「それなら俺も乗らせてもらおう」
「マジで、あざす!」
潤は嬉しそうに礼を言う。これで今日の放課後の予定は決まったな。
「その前にちょっといいかしら土師ノ里君?」
後ろから声が聞こえてきた。それもなかなか敵意がある声だった。
俺はハァっとため息をつきながら、わざわざ後ろを向いてやる。
するとそこには腕を組みながらこちらを睨みつけてくる女子生徒がいた。
こいつは俺のことを嫌っている。そしてこいつの性格から理由を推測できる。俺から見たこいつの印象といえば、真面目で融通が聞かない。さらに気が強いがゆえ学校の規範から逸れることをする人間を嫌う傾向がある。俺みたいな奴はさぞ目障りな存在なのだろうな。
そのおかげで結構俺は櫟本に絡まれることが多い。さて今回は一体どういった用件で俺に突っかかってくるのだろうか?少し楽しみだ。
俺がワクワクしているのを理解したのかはわからないが、櫟本の眉間がさらに険しくなっているように思える。それなりに可愛いのにもったいない。
「それで何の用だ?お前も勉強会に混じりたい?」
「結構。あなたと一緒に勉強しても勉強にならないわ」
一歩引いて俺の提案を拒否してきた。わかっていたが、なかなかの嫌われようだ。
「それじゃあ何の用だ?」
「宿題」
「宿題?」
俺がそう聞き返すと櫟本はさらに目を開いて、俺のことを指差してきた。こらこら人に指をさしてはいけません。
「貴方また宿題をやってきてないじゃない。数学の宿題を!私が毎回集めて確認したら貴方は毎回忘れているのよ」
なるほどそれでこいつが怒っているのか。
「それがどうした?」
理由はわかった。櫟本が怒っている理由は。だが、何故そこまで怒るのかは理解できない。
「どうしたって……貴方学生の本業は勉強よ。それを疎かにしている自覚はないの?」
「ないな。なにせ勉強はしているからな。ただ宿題をしていないだけだ。お前、勉強=宿題と勘違いしているんじゃないか?」
宿題をやらずとも、勉強はできる。むしろ宿題などというのは自分の勉強ペースを崩すノイズでしかない。俺は宿題などというものは不要とさえ思っている。
「くっ!それでも宿題をやるのが常識でしょ!」
「常識?なんとも曖昧な表現だな。そんな主張で俺がハイそうですかとでも?宿題をせずとも罰則は特にないし、宿題をしなければならないということが明文化されているわけでもないからな〜。これといってやる理由は見当たらない」
「ホントあんたは、ああ言えばこう言う!先生も困るでしょ!」
「ああ、先生にはテストで良い点数。具体的には90点以上取るから出しませんよって言ったら快く認めてくれたぜ?つまり俺は宿題に関して裁量権を持っている先生から許可を得ているのだ。少なくとも今回の数学の宿題を管理している先生にはな」
多分俺は今すごい嫌な顔をしているのだろうが、それは仕方ない。
「それでも!」
どうやら櫟本はまだ納得がいっていないようだ。だが、俺も主張を変える気は無い。
「だったら俺を納得させる理由を提示したらどうだ?常識?そんなもの学校によって変わるぞ?宿題すらない学校だってあるぐらいだからな。そんな一般論ではなく、自分の根拠。合理的な根拠を提示してみたらどうだ?」
「〜〜!ふん!」
何も言い返せなかったのか、櫟本は自分の席に戻っていった。それはもうすごい不機嫌な感じで。
「ホント仲悪いよな。お前らは……」
「俺は別に嫌ってはないぞ?ただ突っかかってくるから、それに相手してやってるだけだぜ?」
そう俺は別に櫟本を嫌っていない。あれ程校則遵守のステレオタイプの委員長はそうお目にかかれないのだから。本当に嫌いならそもそも相手にしない。
「委員長、若干涙目だったような」
「それは知らん」
「いつものことと言えば、いつものことではあるな。お前もたまにはあいつに合わせてやったらどうだ?」
蒼太は俺にそう提案する。
「気が向いたらな。というかお前らも結構忘れているだろうが」
そう、こいつらも宿題を結構忘れるタイプなのだ。類は友を呼ぶというが、まさにそれだろう。ただ俺よりは目立ってないだけ、というか櫟本が俺を敵視しすぎて他が見えてないだけだ。こう考えると俺に使う労力を他に使ったほうが効率的なような気もするな。いつか教えてやろうか。いや、やめておこう。確実に怒る。油に火は注ぐもんじゃないしな!
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