王都薬師ギルド案内その3

「気を取り直して、薬師ギルドで一番忙しい部署、薬よ。薬草、病状からの薬の処方まで、一般の方も利用できるわ。本部では薬師に常駐してもらって、薬の調合を行ってもらっているの。あとは薬草もあるから、ポーション作成のために、ここに買いにくるといいわね。大量にいるときは、前もって注文してくれないと、別の買いに来た人が困るから、早めの注文が必要よ。注文してからの期間によっては、断ることもあるから」

「そうなんだ。大量っていうのは、どのくらいの量なの?」

「薬草の入っている棚が見える?」

「うん」

 壁一面を引き出しの棚になっている。

「あの引き出しに入る量を超えるときね。いつも買ってくれる人だったら、別に置いていたりするんだけど、いきなりいるって言うときにね」

「王都で調薬するのか、わからないけどわかった」

「1階は紹介し終わったわね。ギルド員なら新しい薬やポーションの研究のために、資料室を見に行きましょう」

 お姉さんの後ろについて行って、階段を上る。登りきって、右は上に続く階段、正面はなんかの部屋。

「奥が資料室よ」

 廊下を歩いて、奥の突き当たりのドアの前に来る。冒険者ギルドで見たことがある。

「ドアの赤い光の魔導具にギルドカードを近づければ開くわ。原本の持ち出しは禁止だけど、写本して持ち出すのはいいから、自分でいるところを書き出していくといいわ」

「そうなんだ」

 覚えないといけないと勝手に思っていた。写せばいいのか。なるほど、ふむふむ。

 自分のギルドカードを出して、魔導具に近づけると青くなって開く。中には先客がいて、机の上で本を数冊開いて見ていた。白髪のおじいさんだね。

「入ったら、入り口のここに明かりの魔導具があるから、押さないと真っ暗闇で本が読めないからね」

 入ってすぐの壁に押すための突起がある。もう明るいので、押す必要はないね。

「そうだ、忘れていたわ。文字は読めるの?読めないなら、誰かに教えてもらえるように手配するけど?」

「読めるよ。ちゃんと教えてもらった。エリクサーのレシピの載っている本ってあるの?」

 お姉さんはアッて小さく声を上げた。

「ワシが読んでおるぞ」

「僕も見てもいい?」

「古代語で書かれておって、読むにも難しいが見てみるか?」

「うん、それって写本?」

 おじいさんは本から顔を上げると僕のほうを初めて見た。

「そうじゃな、総本部にある原本を写本したものじゃ。ここにある本はだいたい写本になるの」

「古代語の写本って、普通の写本する人が出来るのかな」

「それでもエリクサーのレシピが載っているとなると、薬師は金を払ってでも写本したがる。伝説の薬を一度は作ってみたいと思うもの。憧れじゃのう」

「作ってみたいよね」

 うんうんと頷く。

「この浪漫が薬師ギルドの連中には分からんのじゃ。大枚叩いて龍魔草を手に入れても、エクスポーションにしかならなんだ。その理由を知らんと、納得いかんのじゃ」

「じいちゃんは古代語読めるの?」

「読めんからこうして、古代語の本と一緒に解読をしておるんじゃ」

 じいちゃんの隣のイスを引き寄せて、その上に立って、読んでいる本をのぞき込む。

 本には書き込みも写されていた。解読した人がいるようだ。ただ、最後の解読で私には無理だと書いてあった。なにがそう思わせたのか?

「この龍魔草と分量の記述は解読されているのだ。ほぼレシピと調合法まで分かっていて、解読者はこの解読していない文字を残していった。ワシの失敗した理由もこの文字達に隠されているはずなんじゃ」

 文字をじっと見つめる。ドラゴンの住む場所に生える魔草、これを一掴み?????入れる。読めない。なんだこれ?

「写本が間違ってるよ。こんな古代語見たことない」

「お主、古代語を読めるのか?」

「文字は教えてもらったからね。僕の知っている古代文字にはない。正確な写しをお願いしたら、答えが出るんじゃないかな。なぜ、解読者は無理だって思ったのかも、それを知るのも薬師じゃない?」

「ふん、言われんでもわかっとる。本部長に頼んでみるかのう。お主、名前は?」

 めがねの奥から真っ直ぐに視線を向けられる。

「ランス。F級」

「F級?!はっはっはっ、薬師ギルドはよい人材を手に入れたようじゃ。これは将来安泰じゃのう。覚えておこう。ワシはディクソン。ここの古狸じゃ、覚えておくといい」

 本を片づけ始めたので、残っている本を持ってついて行く。どこにあったか分からないからね。これである場所が分かる。ついて行って、棚の場所を把握する。

「うむ、助かった。老人は大切にせんとな」

 お姉さんはいつの間にかいなくなって、資料室に2人だけになっていた。

「出るときは明かりは消さなくとも、勝手に消えてくれるから気にせんでよい」

「へー。便利。魔導具ってすごいな。こういうのも作ってみたい」

「薬師なら見ポーションをすべて作れるようになってからでも、挑戦するのは遅くなかろう」

「そうだね」

 階段で別れて、僕は下に降りていった。降りるとすぐに人がよってきた。誰かな?

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