恋人の日

「今日は何の日か知ってる?」

ソファで彼女とのんびりしている時に突然問われ、僕は狼狽えた。付き合った記念日でもないし、出会った記念日でもないし……。

「ごめん、何の日か分かんない」

彼女に怒られる覚悟で僕は言った。ソファの上で正座を作り、膝の上に手を置く。まるで犬みたいだ。

「今日はねーふふっ」彼女は下を向いて笑いを堪えている。「恋人の日なんだって」

……ん? 恋人の日?

「なんかの記念日じゃないよ。びっくりさせてごめんね」

その言葉を言う頃には彼女は笑っていた。

「僕がどきどきしただけ……?」

「うん」

「……あとでお仕置きな」

正座を崩して僕はテレビを見るふりをしつつ、この後のことを考えていつまでもにやけていた。彼女がソファでいつの間にか寝ていたのはまた別のお話……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る