第九十三話「サメ」
「これでいいか!」
ボースンの声に振り返ると、戦闘員が銃口を空に向けて待機している。
ボースンの指示で戦闘員が甲板の中心に移動してくれたようだ。
「大丈夫です!」
ルー、モンスターが見えるか?
俺が心の中でそう言うと、作業用クレーンの上にいるルーがモンスターの位置をぼんやりと伝えてくれる。
「<雲雀>」
俺は甲板の中心に一番近いモンスターまで一瞬で移動し、頭部を斬りつける。
ギチッ
刃が止まった?
そういえばこいつ外核持ちだった。
俺は力づくで短剣を振りぬくと、一度距離を取って刃こぼれがないか確かめる。
「よし大丈夫」
このモンスターは鮫肌のように細かな外核で覆われている。
流れに沿って斬りつければまだましだが、いつ刃こぼれするか分からない。
「<魔法武器>」
俺がそう言うと、短剣の周りに緑白い何かがまとわりつく。
これは自分の<MP>を短剣に付与し<STR>に変えるという<特能>だが、自分の<MP>の量が分からないことに加え、消費効率も分からないのでいつまで続くか分からない。
つまり短期決戦だと思った方が良い。
クジラ型モンスターに寄生しているモンスターは絶対数があることが救いだ。
「<雲雀>」
俺は先程のモンスターの頭上に再び移動し、鼻先から背びれにかけて一気に斬りつける。
ビタンッビタンッビタンッ……
一撃じゃ無理か。
しかし外核と肉が裂け核が露出している。
俺はモンスターに馬乗りになり、俺の重さでモンスターの頭がのけ反ったタイミングを狙い、核を斬りつけた。
核を破壊されたモンスターは形を無くし、俺は尻もちをつく。
二撃……、いや四撃か。
手間がかかるが、あの亀猿よりましだ。
とにかく倒し続けよう……
「ふぅ……」
数分の内にモンスターの数はだいぶ減り、少し余裕が出てきた。
戦闘員の人たちもパニックにならずに大人しくしていてくれている。
バキバキバキッ
背後から不吉な音が聞こえ慌てて振り返ったが、ノアが扉を素手でこじ開けた音だった。
これで甲板の上にいる人たちも避難させられる。
戦闘を一時中断して避難誘導に入ろう。
後はクジラをどうするかを考え始めなければ……
「はやく止めなきゃ!」
避難誘導をしていると船内から人の流れに逆らってボースンの息子が出てきた。
「おい、戻れ!」
ノアは両手を広げて止めようとする。
「僕にはやらなきゃいけない事があるんです!」
ボースンの息子はノアの静止を振り切り、船外に出て行った。
「俺が連れ戻してくるよ」
俺はノアにそう言い、船外に出て息子を追いかけようとしたが、姿が見えない。
止めるってなにを止めるんだ?
今この船はエンジンが止まっているから動いてるものも無いはず……
バギチンッ
船の先頭から順にモンスターを倒しながら息子の姿を探していると、後方から奇妙な音が鳴り響いた。
そして次の瞬間、俺の身体は宙に高く浮かび上がった。
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