第六十四話「サプライズ」
「……あれ?」
レゼンタックに預けていた俺の武器ケースの上に小さな箱とメモが置いてある。
[アメリアより♡]
……復帰祝いか?
明日からサボる気満々なのに申し訳ないな。
箱は帰ってから開けるか……
後は明日の申し込みだけやって帰ろう。
ガラガラガラ
「ただい……ま?」
玄関の引き戸を開けると、とんがり帽子をかぶり片手に風船を持ったケイと目が合う。
ケイはゆっくりと帽子を外し風船と一緒に背中の後ろに隠すと、俺の右手にあるアメリアさんからのプレゼントをジッと睨む。
「なんで帰ってきたの?」
「え……、家だから?」
「まだ5時」
「出てって」
「あ、うん」
俺はケイに言われるまま後ずさりすると、玄関の引き戸を閉めた。
最近、ケイの反抗期に傷つくことが多い。
育て方は間違えてないよな……
というか、そもそも俺は親ではないか。
とりあえず言われた通りに6時まで暇つぶしするか……
「ただいまぁ……」
俺は玄関の引き戸をゆっくり開けながら二度目の帰宅をする。
「おかえり!」
先程とは違い、とんがり帽子を被ったヒナコが出迎えてくれた。
「はいこれ、目隠し!」
ヒナコはそう言うと、靴を脱ぐ俺の頭上から兎柄の目隠しを渡した。
俺は何も言わずに目隠しを付け、ヒナコの手に連れられながらダイニングの方に足を進める。
……ん?
良い匂いがする。
あの時の鳥鍋か?
「目隠し取っていいよ!」
俺はヒナコの指示通り、ゆっくりと目隠しを外す。
パンッパン!!
「誕生日おめでとー!!」
二発の破裂音と同時にヒナコの満面の笑みが飛び込んできたが、言葉の意味が理解できない。
「わぁーおめでとー……、って誰が?」
目の前にはケイとヒナコしかいない。
「アレン今日誕生日でしょ?」
「……あ、そっか」
「今日、俺の誕生日なのか」
俺はこの世界に来た時、名前と同じように誕生日も忘れている。
しかし住民票を手に入れるために便宜上必要だったので適当に7月7日にしていた。
そしてそのことをすっかり忘れていた。
「……すぅ」
「ちょっとやり直す」
俺は2~3秒ほど考えてからそう言うと、ヒナコの返事を待たずに目隠しを持ってダイニングを出る。
そしてもう一度目隠しを着けると、ダイニングの引き戸を手探りで開けた。
クラッカーの音は……聞こえないな。
バチンッ
誰かに膝の裏を蹴られた。
ケイだな。
俺がゆっくりと目隠しを開けると、ポカンとした顔をしたヒナコが先程と同じ位置に立っていた。
「やったー!誕生日会だー!」
俺はそう言いながら左手を上げ、右腕でダイニングを後にしようとしていたケイを抱き寄せる。
ちょっと失敗したが嬉しい。
誕生日は結構好きだったのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます