第五十四話「諮る」
俺がウィリアムさんから生き延びれた理由。
それは<窮余の猫足>のおかげだ。
この<特能>の効果は、レベルが高い相手と戦闘時に素早さが5倍になるという物だ。
基本的には<AGI>と<EVA(回避)>がそれに当てはまるらしい。
しかし、この<特能>は常時発動しているので、いくら手加減をしていても俺の身体にとってかなりの負担となっていた。
<窮余の猫足>と<遁走>の効果が単純に重複しないことがせめてもの救いだ。
……まてよ。
この現状を相談するのにウィリアムさんは最善じゃないか?
レベルは高いし、お姫様も色々、知っていそうだ。
いや、でも指輪の事を話さずに上手く説明できるはずがない。
「……二人はこの後どこへ行くんですか?」
「しばらく身を隠してからスパーデに帰るつもりだ」
姿を消すなら思い切って相談するのもありか?
「ウィリアムさんって<黒騎士>なんですよね?」
「そうだ」
「この世界で一番、強い<職業>ってなんですか?」
この聞き方なら問題はないだろう。
「強さのベクトルにも……」「もちろん<聖騎士>よ!」
ウィリアムさんが少し顔を伏せながら話はじめると、お姫様が横からチャチャをいれてきた。
「……<聖騎士>もその一つだな」
ウィリアムは口に手を当てながらそう言うと、お姫様の顔をジッと見た。
<聖騎士>はダメだ。
スキルボードを見る限り、<聖騎士>は足を止めて戦えるタフさが魅力的だが<貧者>には合わない。
お姫様が心配だが、やっぱり正直に話してみるか……
「アクティベイト」
「少し秘密の相談をしたいです」
俺は身体の後ろで左手の手袋を外し、二人の前でスキルボードを表示させる。
そして、今の自分が陥っている状況を少しだけ話した。
「状況は理解した」
「だが<貧者>という<職業>は聞いた事がないな……」
「<勇者>と<魔王>は知っているが他の7つに関しても聞きなじみがない」
レゼンタックでも<貧者>は知らないと言われたし、思っていた通り特殊な<職業>のようだ。
しかし、情報がないのはちょっと困るな……
特殊な情報を持っていそうなお姫様は空を見ながら、なにかを考えているし……
「……君が言うSPに制限があるならば<調教士>や<召喚士>はどうだ?」
「たしか、この二つは使役したモンスターのステータスを自分の物に出来たはずだ」
調教士と召喚士か……
俺はスキルボードから二つを探して見比べてみる。
縄で縛られているから操作しにくい。
はやく解いてほしい。
あった。
確かに二つともウィリアムさんが言ったような<特能>がある。
勝手に弱いと決め込んで<特能>をしっかりと見ていなかった。
セントエクリーガ城下町周辺のモンスターは強くないから、選ぶなら<召喚士>か……
「<召喚士>のデメリットってありますか?」
「まず一つは召喚獣を街に持ち込めない事」
「だが抜け道はいくつかある」
「そして二つ目は召喚されるモンスターを選べない事」
「しかし、召喚獣は<召喚士>の力量によって変わるから君なら問題はないだろう」
「そして三つ目は……」
俺はウィリアムさんから<召喚士>についての情報を聞き出し終わると、空を見ているお姫様を横目に雑談を続けた。
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