第三話「コンプレックス」

 ガチャ


「よーし、試験やるぞー」

「……お前らさっそく喧嘩してるのか?」


 罵りを受けながらも何も言い返さずにそっぽを向きながら待っていると、ようやくノアが部屋に入ってきた。


「だってノアさん!」

「こいつ俺より弱いのに言うこと聞かないんだよ!」


 俺はノアが入ってきたので、そっぽを向くのを止める。


「なに冗談を言ってるんだハリソン」

「アレンの方がお前より強いぞ!」

「お家の中でぬくぬく生きてきたお前がアレンみたいなやつに勝てるわけがないだろ!」

「ガッハッハッハッ!!」


 ノアは大笑いしながら、持っている紙を俺と少年の前に置いた。。


 俺の口角が上がる一方で、少年は口を閉じて顔を赤くしている。



 この少年の名前はハリソン君と言うようだ。


 それにしてもノアは俺の事をどんな人間だと思っているのだろうか……



「えーっと、ハリソンは試験を受けるのは17回目か……」

「お前、そろそろ合格しないと親に学校に送られちまうぞ!」

「んで……アレンは今日が初めてだな」

「今から試験の説明をするからよく聞いとけよ!」


 ノアはそう言うと、俺に試験の説明をし始めた。



 回答方式はシンプルで3択問題が100問、記述問題が5問、回答時間は1時間30分だ。


 そして合格するには3択問題は98点以上、記述問題は満点を取らなければならない。



 ハリソン君が17回目と聞いて笑いそうになったが、その理由が分かった。

 難易度はともかく問題数が多い。


 過去問とかまったく解いてないけど大丈夫かな……



「……じゃあこれが回答用の鉛筆な!」

「これ以外の物で記入をしたら不正になるから気を付けろよ!」


 ノアは俺とハリソン君に鉛筆を一本ずつ渡す。


「よし、じゃあ時間は9時から10時半までな」

「よーーーい、始め!」


 ノアがそう言うと、俺とハリソン君は同時に紙を裏返した。


 よし、やるか……



 Q1 この中の内、Cランクモンスターを答えよ


 1, ラングニュイロ 2, カポウツェロ 3, オニ



 答えは3だ。


 まぁ、一問目はこんなもんだろう。




 Q49 モンスターの幻崩核(PCC)がある場所を答えよ。


 1, 腹部 2, 胸部 3, 頭部



 答えは3だ。


 まだまだ簡単だな。

 ミスだけしないように気を付けよう。




 Q87 この地図上にマークされている場所はどこか


 1, A91 2, B92 3, 1B



 ……答えは2だ。


 一瞬なんのことか分からなかったが、地図をよく見ると意味が分かる。


 地図上にはこの城下町を波紋状に囲むような帯が20個あり、内側から外側に向かってA~T地点まである。

 そして、その帯はさらに1~92の番号で分けられている。


 俺が昨日やった書類仕事はこの地図とモンスターの位置を照らし合わせた記録をしていたようだ。


 場所的に2と3が微妙だが、あの時に記入していた順番はアルファベット→数字だったので3はありえない。




 ……なんか全部、簡単じゃない?


 ……これ、一発合格あるか?



 俺は特に苦戦することなく30分程度で3択問題を解き終え、記述問題に入った。

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