第五十話「レストラン」

「よし、じゃあご飯いくか……」


 俺は膝に手を着いてソファーから立ち上がる。

 それに続き、ヒナコとケイも立ち上がった。


 先程の卵の話を聞いたからなのか、12時を目前として俺の食欲は0に等しい……



 レゼンタック備え付けのレストランは建物の外側と内側にそれぞれ入り口があり、内側から入るには社員証を読み取り機にピッとやる必要がある。


 社員証をかざす時に気づいたが、俺とヒナコとケイの社員証はそれぞれ色が違った。



 中に入ると食券機があり、俺たちはその前に立つ。


 メニューは実に様々だったが、日本食はオムサイス、かつ丼、海鮮丼、おにぎりセットしか無かった。



「アレン!オムライスってなに?」


 ケイは俺のスーツの裾を強く引っ張りながら慌ただしくしている。


 オムライスを説明しろと言われても、そもそもケイはケチャップを知っているのだろうか……

 それに、あの卵の正体を知っているのか?


「……気になるなら食べてみれば?」


 百聞は一見に如かず、経験は大事だ。


 ケイは少し悩み、オムライスのボタンを押す。

 そして、俺は海鮮丼、ヒナコはジェノベーゼパスタのボタンを押した。


 俺が海鮮丼を頼んだ理由は、今後のために生魚のクオリティを知っておきたいのと、ウォロ村では火の入った魚しか食べていなかったため、生の魚も食べたかったからだ。


 三点合わせて98ギニーなので多分安い。


「<貧者の袋>」


 俺は財布を取り出して会計を済ませようとすると、脇からヒナコが食券機にお金を入れた。


「お買い物のために、お金残しといて!」


 ヒナコはそう言うとニコッと笑い、出てきた食券を取った。



 食券にはNo,104と書かれており、カウンターでおばちゃんにそれを渡すと30秒足らずで3品が出てきた。


 おそらく食券機は厨房と繋がっているんだろうが、それにしても早すぎる。

 これも<特能>の力なのだろうか……


 調理工程が少し心配だが、待ち時間がないのはかなり嬉しい。



 3品は1つのトレーに乗っていたので、それは俺が持ち、ヒナコに案内されるがままに4人席のテーブルに座った。


 ケイは3人分の水を持ってくると俺の隣に座る。


 三人席に着いたところで、俺はさっそく自分の丼を手元に寄せ箸を伸ばした。


「え?いただきます、しないの?」


 ヒナコは自分のパスタ匂いを嗅ぐのを止めて、少し険しい顔で俺を見た。


「あぁ……」


 ヒナコのその言葉に俺はハッとし、箸を手元に置く。


 習慣とは恐ろしいものだ……


「いただきますっ」「いただきます!」「いただきまーす」


 三人そろえていただきますを済ませた所で俺は再び丼に箸を伸ばした。



 さて……


 丼の上には4種類の魚?と1種類の野菜が乗っている。

 この世界にきてから初めての生魚だ。


 このセントエクリーガ城下町は海から特別遠いわけではないので鮮度的には大丈夫だと思うが、取り扱いについてはかなり不透明なところがあるので心配だ。



「……よし」


 俺はまず、カツオのような色合いの魚に手を伸ばした。

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