第二十六話「快感」

 小走りで川沿いを下っているとあっという間に洞窟の近くまできた。


「さてと、やりますか……」

「アクティベイト」


 俺はスキルボードを開きながらリベイロに近づき、鎌を振り下ろす。


 ズシュッ


 <STR>と<AGI>のバランスはいい感じだが何か物足りない。

 無駄な力が入っているというか……なんというか……


 おそらく他のステータスも並行して上げなければいけないのだが、何を上げたらいいのか分からない。


 とりあえず一度バックステップで後ろに下がった。


「おっとっとっと」


 俺は転びそうになる身体をちっぽけな体幹で支える。


 SPを確認すると昨日の夜と同じ40ポイントのままだった。

 どうやら、もうリベイロからはスキルポイントを得られないようだ。

 


「ステイ」


 俺は少しリベイロを少し間引いた後、洞窟の中へ足を進める。



 しばらく進むとカテラの狩場が見えてくる。

 3日目にして慣れてきたのか、足を滑らす不安はまったく無かった。


 俺は鎌を構えながらゆっくりとした足取りで、光の柱の方へ進む。


 バサバサッ


 バサバサバサバサッ


 今日も相変わらずたくさんいるようだ。



 俺が光の柱の中心で足を止めると、カテラが天井近くから俺の周りに降りてくる。


 昨日<DVA>を上げたおかげか、カテラの動きが鮮明に捉えることができる。

 <DVA>というステータスは<HP>が少ない俺にとってかなり重要なステータスなのかもしれない。



 ズシャッ


 近づいてきたカテラを手慣れた動きで真っ二つに分断する。


 <STR>を上げたおかげで、カテラの身体がトマトぐらいの柔らかさに感じた。


 ズシュンッ


 続けざまに襲ってくるカテラを再び真っ二つにする。


 俺はカテラの動きに警戒しながら横目でスキルポイントを確認すると、44ポイントになっていた。


 ということはカテラは一体につきSPを2ポイント得られるようだ。


「ステイ」


 流石にスキルボードを出しながらだと戦いにくい。



 俺は順調に洞窟の中を掃討した。



「ふぅ……」


 このなんとも言えない強さによる快感が心地よい。

 無双感というべきだろうか。


「アクティベイト」


 SPを確認すると50ポイントになっていた。


 俺はカテラを5体以上倒しているので、カテラから得られるSPにも上限がきたようだ。


「ステイ」

「帰りますか……」


 俺は<EVA>と<DVA>に5ポイントずつ振り、40ポイントを残した状態でスキルボードを閉じた。



 洞窟から出ると、まだ太陽が高い位置にある。


 分かったのは多少のステータスupでも実感できるほどに強くなる事だ。



 俺はこのナメクジたちを全て倒して帰ろうかと思ったが、途中で飽きたので10体ほど残した状態で村へ戻った。




「ただいまー」


 俺は村の前に立っているカイに話しかける。


「早かったな」


 カイは太陽の位置をちらっと確認した。


 俺は腰に差してある花をどや顔でカイの目の前に突き出した。

 もちろん一枚の花びらも欠けていない。


「はいはい……」


 カイは手の甲で俺の事を仰ぎながら、村の中へと促す。



 俺は軽くカイに向かって軽く手を上げると、家に帰らず村長の家に向かった。

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