第二章 第二十八話 新しい日常
「向こうの離れた敵を倒して貰える?
私はあそこの物陰に潜んでいるから、合図をしたらおねがい」
「わかりました・・・!」
とある場所、岩だらけの荒れた土地で二人の男女が
物陰に身を隠しつつ会話しています
と言っても、片方の女性はとても背が高いものの
反対に男性のほうは子供と言えるほど背が低い不思議な組み合わせでした
そして、二人の正面には人とも動物とも言えない
化け物と言って差し支えない不気味な影がいくつもあります
女性は身を低くすると、それらの動向を伺いつつ
少し離れた岩陰まで移動し、少年へ手を振りました
「よぉし・・・、グレース・ブルス!」
合図を受けた少年が不思議な言葉を唱えると、
氷のような塊が綺麗な放物線を描いて勢いよく飛んでいきます
そして、注文された通り少し離れた場所にいる化け物へぶつかりました
すると、不気味な存在は断末魔の叫びを上げ、煙のように消えてしまいます
「当たった、よし、次は・・・」
命中を確認した少年が他の化け物の方へ向き直ると、
向こうも彼の方を見ていました
そして、消えていない数体の影は全員揃って勢いよく向かってきますが、
そこへ横から剣らしき武器を振りかざした女性が勢いよく飛び出します
「クォール・フォー! はぁっ! せいっ!」
彼女もまた不思議な呪文を唱え、振り下ろした刃で一体、
そして返す刀でもう一体の化け物を切り伏せます
すると、二体の不気味な存在は消え去り、残った二体は反射的に女性の方を向きました
そこへ再び、少年が不思議な呪文を唱えます
「今だっ! グレース・ブルス!」
先ほどのように氷らしき物体が飛んでいき、残った方の内一体に命中します
今度はそちらに気を取られた最後の一体を再び女性が攻撃し、
全ての化け物が消え去ってしまいました
「やっ! ・・・ふぅ、お疲れ様、マモルくん♪ 今ので最後よ♪」
「アミーお姉さん、ありがとうございます♪ 良かった・・・、無事に退治できましたね♪」
二人の名前は、小さな少年の方は守くん、大きな女性の方はアミーお姉さんと言います
男の子の方は、この世界の女神様によってここへ連れてこられた
ごく普通の少年でしたが、その時女神様から魔法を使えるようにしてもらいました
そんな彼を偶然保護したのがアミーお姉さんと呼ばれた女性、
二人は先ほどの化け物、モンスターを退治できるシュクトゥル・セージュという資格を持っています
と言っても、守くんがその試験に合格したのは少し前のことだったので、
先ほどの戦闘は新米である守くんをお姉さんが指導していたのでしょう
「こうして町の外でお仕事するのも今日で10回目かしら、マモルくんもかなり慣れてきたじゃない♪
だけど、慣れてきた時が危ないんだから気を付けてね?」
「はい、分かってます♪」
「・・・ちょっと不安の残る返事だけど、まあいいかしら、
それじゃ、今日はこのくらいにして戻りましょう」
「はい♪ ありがとうございました♪」
二人は今も小さな家で一緒に住んでいます、
とても色香のある年上のお姉さんとの生活はいろいろと刺激的なこともありますが、
守くんはこの生活にいちおう慣れ始め、そして気に入っていました
異なる世界で過ごす日々は、少しずつ彼の「新しい日常」へと変化していきます・・・
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