第十九話 二人の決意
「ん・・・、あれ・・・? ぼく・・・なんで・・・」
薄暗いお部屋の中、ベッドの上で守くんが静かに目を覚まします
お風呂へいたはずなのにいつ移動したのか、
記憶があいまいな守くんは覚えている範囲でたどろうとしました
ですが、すぐ横から声をかけられ思考は中断されます
「あ・・・、マモルくん、目が覚めた?」
「え・・・? あ、アミーお姉さん?」
驚いて横を見ると、ベッドにはアミーお姉さんも寝ていました
どうやら、守くんが目覚めるのを待っていてくれたようです
「覚えてる? マモルくん、またお風呂でのぼせて倒れちゃったのよ?」
「あ・・・、そ、そうでした・・・、うう・・・」
お姉さんに言われ、守くんはお風呂で何があったか
思い出してしまいました
裸のお姉さんたちに身体を洗われたことや、
アクシデントで胸を触ってしまったこと、しまいには
二人の胸に思い切り挟まれてしまったこと・・・
とてもとても刺激的な記憶が蘇り、
また鼻血が出そうになってしまったため
ベッドに顔を埋めて記憶を追い出そうとします
「お姉ちゃんは平気だって言ってけど、
一応ついててあげようと思ったから・・・」
「そ、そうだったんですね、ありがとう、ございます・・・」
「でも大丈夫みたいで安心したわ♪
もうすっかり陽も沈みきっちゃったから、
マモルくんもそのまま寝ちゃいなさい♪」
そう言われて守くんが部屋の中を見回してみると、
窓から見える空はすっかり暗くなり、
月と星の明かりが差し込んでいることに気付きました
長い時間ついていてくれたことに感謝する守くんですが、
アミーお姉さんは部屋を出ようとしてします
「あ・・・、ま、待ってください・・・!」
「? どうしたの?」
つい呼び止めてみたものの、具体的に何を言うか定まっておらず
守くんは言葉に詰まります
そして、少し考えちゃんと言わなければいけないことがあったと気付きました
「あの・・・、お姉さん・・・、ごめんな・・・、いえ、ありがとうございます・・・」
「? どういたしまして・・・、付き添ってただけで
そんなに改まってお礼を言わなくても大丈夫よ?」
「えっと・・・、そのことじゃなくて・・・、それもあるんですけど、あの・・・、
僕が、試験を受けることを許可してくれたことなんです・・・」
「・・・・・・もしかして、ベルお姉ちゃんに何か言われた?
私が心配してるとかどうとか・・・」
「はい、言われました・・・」
「んもう、相変わらずおしゃべりなんだから・・・、
マモルくんもそう気にしないでいいのよ? 女神様に頼まれたこともだけど、
あなたが決めたことに私が口を出す権利はないんだもの♪」
そう言ってのけるアミーお姉さんですが、
守くんはどこか声に力がないような気がします
少し呼吸を整え、緊張をほんの少し和らげると
勢いに任せて言葉を続けました
「えっと・・・、うまく言えないんですけど・・・、
僕、お姉さんがどれだけ心配してるかあんまり考えていなかったんです・・・」
「だけど、お姉さんはそれでも僕のことを考えてくれていて・・・、
だから、心配してたのに許可もくれて・・・」
「女神様にお願いされたこと、どうしてお願いされたか分からないんですが
とっても大事なことのはずなんです・・・、
なので、やめるわけにはいかないんですけど・・・」
「僕、怪我とかしないように特訓がんばります・・・、
だから・・・、アミーお姉さんが安心できるくらい、強くなりますね・・・?」
「だから、その・・・、えっと・・・」
とても拙くたどたどしい言葉でしたが、
ともかく守くんは言うべきことをきちんと伝えます
そこまで聞いたアミーお姉さんは、もう一度守くんの側まで来ると
その手を取って優しく包み込みました
「ありがとうマモルくん・・・、あなたの気持ち、ちゃんと伝わったわよ・・・、
そこまで言うなら、私も覚悟を決めるわ♪」
「え・・・? それって・・・」
「あなたが強くなれるよう、私もできる限り協力するわね♪
試験までの間、何日かは討伐のお仕事を任されてるんだけど、
それがない日は私も特訓してあげる♪」
「お姉さん・・・、ありがとうございます♪」
「いいえ♪ このくらいお安い御用よ♪
それに・・・、実を言うと、ベルお姉ちゃんからちょっと過保護すぎるって
窘められてたのよね・・・」
「そう、なんですか・・・?」
「まあ、ちょっと心配だったから・・・、でも大丈夫、
今のマモルくんの言葉で気持ちは決まったから♪
その代わり、やるからにはしっかり強くなってちょうだいね?♪」
「はい、僕やります♪」
その言葉を聞いたアミーお姉さんは、
手を放すとお休みの挨拶をして部屋を出ていきます
そしてある程度離れたところで足を止めると、
お風呂へ入る前にベルリーナさんから言われたことを思い出しました
(・・・・)
「マモルちゃんが女神様からもらったって言う素質、
この目で確かめたけれど確かに嘘じゃなさそうねぇ・・・」
「お姉ちゃんの目から見てもそうだったの?」
「ええ、詳しい説明は省くけど、少なくともこの世界における魔法とは
かなり原理が異なっていたわぁ」
「そんなに・・・」
「でもだからこそ、あの子はそれを自分で使いこなせるようにならないといけないの」
「それはそうかもだけれど・・・」
「マモルちゃんに力を与えた『女神様』がどういうつもりかは知らないけれどぉ・・・、
あの力はいろいろな危険に巻き込まれる可能性を秘めているわ」
「・・・・・・」
「だから、危険に出くわした時のために、
少しでも強くなっておいた方がいいと思うの、
アミーちゃんの気持ちは分かるけど、ちょっと過保護になってないかしらぁ?」
「・・・、そう、かもしれないわね・・・、
どうしても不安が拭えなくて・・・」
「そこはまあ、マモルちゃんと、『女神様』を信じましょうよ♪
それにほら、私だっていろいろ力を貸してあげるわよぉ?♪」
「・・・そうね、私も協力しなきゃいけないわね、
特訓、参加してもいいかしら?」
「もちろんよぉ♪ ふふ、久しぶりねぇ♪
アミーちゃんと一緒にできるなんて・・・♪」
「言っておくけど、あの時みたいな悪戯は勘弁してよね」
「あれも特訓の一環よ♪ それより、私たちもお風呂に行きましょ?♪
ちょっといいものが手に入ったから、マモルちゃんにも使わせてあげなきゃ♪」
「? よく分からないけど、とりあえずお風呂は入りたいわね♪
お姉ちゃん家のお風呂、おっても大きいもの♪」
「うふふ♪ じゃあ決まりね、行きましょう♪」
(・・・・)
守くんの貰った素質について、お姉さんは簡単な説明を受けていたようです
一つ一つ思い出しながら、アミーお姉さんは一人静かに決意します
(もしも、あの子の身に及ぶ危険がほんとうに危ないものだったら、
その時私に何ができるかしら・・・)
(いえ、今からでもいいわ、できることを少しずつ増やさないと・・・、
考えるのはそれからでも遅くない)
(それと・・・、後から魔法を習ったマモルくんには負けられないものね♪)
(ふふ・・・、それにしても、さっきのマモルくん、ちょっとだけ
いいなって思っちゃった・・・♪)
(弟ができたように思えてたけど・・・、意外としっかり男の子してるのね・・・♪)
ほんの少しだけ頬を赤らめながら、お姉さんはそこで思考を切り上げ
ゆっくりと歩き出しました
あの会話でどこまでの影響があったかは定かでありませんが、
少しずつ・・・、ほんの少しずつみんなの心は変わっていってるようです・・・
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