第十七話 お姉ちゃんのお家

「こ、ここがお姉ちゃんのお家・・・、なんですか?」


「そうよぉ♪ とっても大きいでしょぉ♪」



 それから守くんは、お姉ちゃんに案内されて移動し、

近くにあった家へ到着します


 しかし、それは家というよりも屋敷・館と言った方が正しいような、

遠くから見ても分かる豪邸でした



「相変わらず大きいわよねぇ、今はベルお姉ちゃんしか住んでないのに」


「でも、こういう時はお泊りできて便利でしょ?♪

懐かしいわねぇ・・・、昔はアミーちゃんもしょっちゅう泊まりに来て・・・」


「ええ、泊まる度に同じ味のエネレーばっかり食べさせられて、余っていた服をいっぱい着せられて、

お風呂で悪戯されたりもしたわね?」


「あらそうだったかしらぁ♪ 楽しかったことだけは覚えてるんだけどぉ・・・♪」


「はいはい・・・、とにかく行きましょうか、お姉ちゃん門あけて」


「おっとごめんなさい、・・・はぁい、二人ともどうぞっ♪」



 ベルリーナお姉ちゃんが門を指さすと、大きな門がそれだけで開きます


 恐らく魔法の力なのでしょう、守くんはどうやったのか気になりましたが、

それ以上に住まいの豪華さが気になっていました



「すごい・・・、おっきな柱がいっぱいです・・・♪

窓もたくさん・・・、お部屋もすっごくありそうです・・・♪」


「うふふ、そうでしょぉ?♪ お部屋、いくつもあるから

マモルちゃんも好きに使っていいからねぇ♪」


「確かに部屋は余ってたわね・・・、さ、マモルくん、入りましょう♪」


「あ、はい♪」



 いつまでも外観を眺めていそうな守くんでしたが、

お姉さんに促されて中へ入ります


 ここへ来るだけでもそれなりに疲れていたようでしたが、

初めて見るお屋敷に興味津々で、疲労もすっかり吹き飛んでいました



「はぁい♪ 私のお家にようこそぉ♪」


「うわ・・・、すごい・・・♪ 綺麗なものがいっぱい・・・♪

ベルリーナお姉ちゃんって本当にすごい人だったんですね♪」


「そうでしょう?♪ もっと褒めていいのよぉ?♪」


「マモルくん、あんまりお姉ちゃんが調子に乗るようなこと言っちゃだめよ?

あと、いろいろ見て回りたいんでしょうけど、とりあえずご飯にしましょうよ、

・・・と言っても、あるのは「あれ」だけよね?」


「もっちろん♪ さあいらっしゃいマモルちゃん♪ お食事はこっちでするのよぉ♪」



 煌びやかな装飾で彩られた華やかな玄関が三人を出迎えてくれますが、

見学は後回しになって先に食事が始まります


 そして通された、これまた豪華なお部屋では、

案の定プレーン味のエネレーが振る舞われました



「さあどうぞ♪ い~っぱい召し上がれぇ♪」


「はい、ありがとうございます♪ じゃあいただきまーす♪」


「いただきます・・・、うぅ、やっぱりこれなのねぇ・・・、

お姉ちゃん家でこれ以外のを出してもらった記憶がないわ・・・」


「だってこれしか買ってないんだもの♪

このプレーン味が一番おいしいのよねぇ♪」


「お姉ちゃんはそれで良くても、私はやっぱりいろんな味が食べたいわ・・・」 


「昔はよくそうやって駄々こねてたわねぇ♪ 懐かしいわ・・・♪」



 おいしそうにかぶりつく守くんと、普通に食べ進めるベルリーナお姉ちゃんですが、

アミーお姉さんだけはもそもそとゆっくり食べています


 どうやら、これまでにベルリーナお姉さんから

同じものをたくさん食べさせられていたみたいです



「お姉ちゃんったらこればっかり出すんだもの、

結局自分で買わなきゃいけなかったわ・・・、

特訓より食事の方が大変だった思い出があるわよ・・・」


「いまとなってはいい思い出ねぇ・・・♪ あの頃はよくアミーちゃんを鍛えてあげたものだわ・・・♪

あ、マモルちゃん、おかわり欲しかったら遠慮なく言ってね?♪」


「えっ、いいんですか? じゃ、じゃあ、もう一個食べたいです・・・♪」


「どうぞどうぞ♪ いっぱいあるから遠慮なく食べなさぁい♪

いっぱい食べて休んで、特訓しないといけないものね♪」


「わぁ♪ ありがとうございます♪」



 おいしそうに食べる守くんを見るのが嬉しいのか、

お姉ちゃんは笑顔でエネレーを出してくれます


 結局守くんは、お姉さんが食べ終わる前に

二人分のエネレーを食べてしまいました



「ごちそうさまでした・・・♪ おいしかったです♪」


「ふふ、どういたしまして♪ 久しぶりに誰かと食事ができて

私も楽しかったわぁ♪」


「マモルくん、早く食べちゃったわねぇ・・・、

やっぱりお腹が空いてたのね」


「みたいです・・・、でももうお腹がいっぱいだから・・・、あふぅ・・・」



 満足そうに一息つく守くんですが、

空腹が満たされて眠くなったのか欠伸が出てしまいます


 それを見たお姉ちゃんが、不意にこう言いました



「マモルちゃん、そろそろおねむかしら・・・、

そうだ、お風呂の用意してあげるから先に一人で入っちゃいなさぁい♪

私はアミーちゃんと少しお話があるから、後から入るわ♪」


「えっ、そうですか? じゃあ、先に入らせてもらいますね♪」


「そうしてもらえる? 私、まだ全部食べられそうにないし・・・」



 お風呂に、それも一人で入るよう言われた守くんは

嬉しそうな返事をします


 落ち着いて入浴できることもそうですが、

バスルームがどれだけ豪華なのか気になっているのでしょう


 食事が終わっていないアミーお姉さんをその場に残し、

ベルリーナお姉ちゃんに案内してもらいます



「はぁい、お風呂はここよぉ♪

脱いだ服はここに置いといてねぇ?♪ これは知ってるかしらぁ?」


「服を洗ってくれるもの、ですか?

アミーお姉さんのところにあったものと同じに見えます」


「正解よぉ♪ これはどの家庭にもある奴のはずだから、

ほとんど違いはないでしょうねぇ♪ だ・け・ど~・・・、

お風呂の中は一味違うわよぉ?♪」


「わぁ・・・♪ 楽しみです♪」


「お湯はもう準備できてるし、中の物は好きに使っていいからねぇ♪

それじゃあ私は戻るから、ゆっくり入ってらっしゃぁい♪」


「はい、ありがとうございます♪」



 そう言いながら出ていったベルリーナお姉ちゃんが扉を閉めた瞬間、

守くんは急いで服を脱ぎ始めました


 どんなお風呂が待っているのか、

期待に胸を膨らませながら扉を開けると、そこには初めて見る光景が広がってました



「うわぁ、すごい・・・♪ こんなお風呂初めて・・・♪」



 守くんが思わずため息をこぼしますが、

それも無理からぬことだったでしょう


 何せ、そのお風呂はとても広く、いろいろな装飾の置かれた

とても豪華なものだったのです


 お湯が出続ける構造のよく分からない彫像や

天井を支える大きな柱など、

想像に描いていたようなものがいくつもありました



「お湯は・・・、ちょうどいいくらいかな?

・・・一人で入っていいんだよね♪」



 後ろへ振り返り、誰も見ていないことを確認すると

守くんはゆっくり足を入れました♪



「あったかい・・・♪ 飛び込んでみたかったけど

あんまり深くないや、・・・だけど、この広さなら泳げちゃうよね♪」



 そうつぶやくと、守くんはまた入口のほうを確認した後で

湯船の中を軽く泳いでみます


 行儀が悪いことは分かってるみたいですが、

好奇心を抑えきれなかったのでしょう


 端まで行って、また最初の場所まで戻ると一応満足したのでしょうか、

その場で足を伸ばしてゆっくりとお湯に浸かります



「ふぅ・・・♪ 気持ちいい・・・♪

こんなに広いお風呂、初めて入ったなぁ・・・♪」


「気持ち良くて、なんだか寝ちゃいそう・・・♪

あぅ・・・♪ おっと、寝ちゃダメだよね、起きないと」



 あまりの気持ち良さに微睡みかけたものの、

自分で起きると軽く顔を洗って目を覚ましました


 そして、改めて身体を洗おうと思ったのでしょうか

湯船から上がろうとしましたが、不意に声がかけられます



「マモルちゃーん、お湯加減はどうかしらぁ?♪」


「あ、ベルリーナお姉ちゃん? はい、とってもいいお湯ですよ♪」


「あらそう♪ それは良かったわぁ♪」



 声に反応して入口を見てみると、ガラスのように透明な扉へ人影が映っていました


 どうやら、ベルリーナお姉ちゃんが様子を見にきてくれたようですが、

よく見てみると何かがおかしいことに気が付きます


 ぼんやりとしか見えませんが、人影が二つあるようでした


 二人揃って様子を見に来てくれたのかと考える守くんですが、

続くお姉ちゃんの発言でその理由が分かってしまいます



「じゃあ、私たちも入るから、みんな一緒に入りましょう?♪」


「えっ・・・? ええっ!?」



 守くんの驚いた声を気にすることなく、

扉に映る影が服を脱ぐような動作を取り始めました


 守くんは慌てて顔を背けると、

どうしてこうなっているのか考えます



(えっ? えっ? お姉ちゃん、先に入っていいって・・・、

一人で入っていいって・・・)


(二人とも、僕の後に入るんだと思ってたけど・・・、

も、もしかして・・・、お話が終わったらすぐ来るつもりだったの・・・?)



 お姉ちゃんの言葉を勘違いしてしまったのかと

あたふたしながら考える守くん


 そして、ほどなくして扉の開く音が聞こえ、

その考えが恐らく正しいと分かってしまいます



「相変わらずベルお姉ちゃん家のお風呂は広いわねぇ・・・、

あ、マモルくん♪ そこにいたんだ♪」


「だからみんな一緒に入れるし、一緒に入った方が楽しいんじゃなぁい♪

あ、いたいたぁ♪ マモルちゃん、私の家のお風呂はどーお?♪

広くて気持ちいいでしょぉ♪」


「お、お姉さんに、お姉ちゃん・・・、その・・・、わっ!?」



 楽しそうな声に呼ばれて振り向いた守くんですが、

二人の姿をちらっと捕らえた瞬間慌てて前へ向き直りました


 なぜなら、二人とも何一つ身に着けておらず、裸だったからです


 もはや様子見に来たわけではなく

一緒にお風呂へ入るつもりなことは明らかでした


 これから守くんにとって、とっても刺激的で危なくて、

ドキドキが止まらない時間が始まってしまいそうです・・・


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