第116話 景虎が得たもの

「景虎様、うまいです!」


実乃は、リラックスした表情でお茶を飲んでいる。


「うん。美味しい」


好花も満足気に、にこーっとしている。


「定満さん、まだまだ凄い報告があるんです!」


朝信は、ニヤニヤしている。


「まだあるんですか!?」


宇佐美定満は、身を乗り出して聞いてきた。



「はい。


景虎様は、後奈良天皇に拝謁しました。


そして、越後国内だけでなく、近隣の賊も成敗するようにという綸旨(りんじ)も賜ったんです」


朝信が得意そうに話すと、弥太郎が手を挙げた。


「朝信さん!


質問があります」    



「弥太郎くん、どうぞ」



「綸旨ってなんすか?」


「綸旨っていうのは、


天皇の意をうけて秘書的仕事をする蔵人(くろうど)が


発給する命令文書のことですね」



「ふーん。それって、凄いの?」


「凄いですよ!


天皇から直接、命令を受けているということですからね!


それが、越後国内にとどまらず、近隣の賊も成敗せよということですから!



景虎様が率いているのは、義軍であるとともに官軍となったということですよ!」


好花は、ニヤッとして、話す。


「ということは、最高の大義名分を得たわけですね」


「好花様。するどいですな。


その通りです。


これで、信玄も焦るだろうな」


実乃もニヤッとする。




「でもな、信玄はな、古き権威は敬っても


それを自らの政策の下位に置く人間なんだ。


だから、信濃国への侵略はやめないだろう。


ま、


なんで、景虎だけが官軍なんだよ!?


と怒っている可能性はあるがな」



「景虎様のおっしゃる通りです。


信玄の動向はこれからも気をつけて見る必要がありますね。


まぁ、信濃国あるいは、関東、奥羽、北陸道の国人・豪族にあたえる影響は多大でしょうが」


「そうだな。


定満の言う通り、


国人・豪族は、これから俺たちに従う可能性は前よりも、ぐんっと上がったと思うぞ」




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