第101話 女人堂の由来②
だが、この縁談の成立を喜ばぬ者もいた……。
それは、小杉の母である。
小杉の母は、後妻だから、小杉とは血が繋がっていない。
でね、実は、小杉の母の弟、幸作(こうさく)は、小杉のことが好きだったのだ。
だから、母は、自分の弟と小杉を結婚させたいと思っていた……。
その年も暮れて正月になった。
小杉の父は、朝から旦那寺や村長の家へ年始廻りに出ていた。
その時、ちょうど、小杉のことが好きな幸作が家に訪ねてきたのだった。
「正月だからって、幸作が訪ねてきたよ。
あっちの部屋にいるので、一緒に話そう」
「幸作さんがきてるのね!
会いたい!
でも……」
小杉は迷った。
父には、客がきても絶対に出るなと言われていたのだった。
それが親戚でも出てはいけないと。
なぜかというと、
結婚が間近に迫っている中、何か悪い噂がちょっとでも出ると、結婚が取りやめになってしまうかもしれないという心配から、そう言ったのだった。
「あの、お父さんにね、誰がきても出ないようにと言われているの」
「知ってる。けどさ、少しくらいなら良いと思うよ?」
「えー……」
「さすがにそれくらいでは怒らないよ。お父さんは」
「挨拶するくらいだもんね!
それくらいいいよね!」
「うん!」
小杉は、迷った挙句、母の弟がいる部屋へ行った。
「結婚するんだってね。
おめでとう」
「ありがとう。
こんな私が、あんな偉いところにお嫁に行っていいのかなって思う」
そう言いながら、幸作にお酒をお酌した。
「あなたは、素晴らしい人だよ。
優しくて、立ち振る舞いも上品で、何事も器用にこなしてさ。
そんな女、なかなかいないよ」
母の弟は、お酌されたお酒をぐいっと飲んだ。
「今日は凄い褒めてくれるのね。
嬉しい」
「普段は照れくさくて言えなかったんだ。
そして、あなたは
美しい」
幸作が小杉の髪に触れた時、小杉の父が部屋に入ってきた。
父は、その光景を見た瞬間、血相を変えた。
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