第81話 レイラ再び
レイラは公務が休みになる日を待って、早速、日本に向かった。
間の悪いタイミングで、ヨーロッパ王族の結婚式で、レイラの事を見知った、世界的に有名なハリウッドの映画監督が、キーロヴィチのアップしたMVのコメント欄に、世界中の人々が途中に映る二人は誰だろう、と書いているのを見て、自分のSNSにコメントを投稿した。
<今話題になっているキーロヴィチ監督の「One smile for all」というMVに映っている女性はサファノバ国の麗しき女王陛下です。私も彼女を映像に収めたいと願っていたのですが、先を越されました! 一緒に映っている男性! 私も映像に収めたいので名乗り出てくれると有り難いのですが!>
その為、レイラが出国した後の城にインタビューの依頼が数多く舞い込んでいた。大臣たちは仰天して、慌てて依頼を断った。
そして、日本でも、その監督のコメントを読んだ記者たちが映っていた二人にインタビューを申しこもうと、つてを探し始めていた。
レイラは大臣たちに見つからないように、民間機に乗り込んで日本を訪れた。前回、専用機で日本に飛んだ為、大臣たちに見つかってしまい、小言を言われたからだ。専用機が格納庫に収まっていれば、レイラが不在だとは思われないだろう。
新婚旅行で日本を訪れた後、帰国するハリウッド俳優と歌手を追いかけていた記者たちが、空港にちょうど集まっているという最悪のタイミングで、レイラは空港に降り立った。
レイラは今まで、アジアでも欧州でもほとんど露出していなかった為、いつものように自分は関係ないと、記者たちの横を気にもとめず、通り過ぎた。記者たちの中の一人が、レイラがMVに出ていた女性だと気が付いた。
透に会いたい一心で、気が急いていたレイラは、早足で歩いていた。追いかけてくる足音に気づいたマルコヴィッチが、アントンを促すと、「サファノバ」「女王だ」と言う言葉が聞こえてきた。アントンが慌ててレイラに伝えた。レイラがホテルからの迎えの車に乗り込む直前に、記者の一人がレイラの腕を引いた。
驚いて振り返ったレイラをフラッシュの嵐が襲った。暗殺の心配も無くなっており、大臣たちに見つからないように、今回、護衛は二人しかついていない。護衛二人はなんとかレイラを守るように立ちはだかった。しかし、暗殺から免れる手立ては知っていたが、パパラッチから逃れる方法は知らなかった。
レイラは掴まれた手を振り解くと、毅然とした態度で記者たちに対峙した。
「私がサファノバの女王だと、知っていて腕を引いたのですか? 日本の記者たちは海外の王族に対して払う敬意を持ち合わせていないようですね。ここは許可もなく写真を撮る野蛮な国なのですか?」
アントンが厳かに告げた。
「サファノバでは高位の女性に対して、許可なく触れる事は許されない。この非礼を日本国政府に訴えてよろしいか」
一斉に焚かれていたフラッシュが止んだ。記者たちは顔を見合わせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます